成果を出せているのは4社に1社

調査を並べると、AIで具体的な成果を出せている企業は少数派です。BCGが2024年10月に公表した調査(59か国のCxO 1,000人)では、AIで具体的な価値を出せていない企業が74%で、PoCの先に進んで価値を出せているのは26%でした。McKinseyの「The state of AI in 2026」(2026年8月、97か国1,719人)では、AIが全社でスケールしていると答えた割合は44%に増えた一方、EBIT(利払い・税引き前利益)への効果を報告したのは37%で横ばいでした。

製造業に絞ると、McKinseyの2018年調査(7市場・700社超)で、デジタル製造ソリューションを全社展開できた企業は約30%でした。障壁として挙がったのは、人材69%、ROIの欠如61%、ビジョンの欠如59%、IT環境の不備44%超です。

PoCの先に進んでAIの価値を出せている企業
26%
BCG(CxO 1,000人・59か国、2024年10月)
AIによるEBITへの効果を報告した企業
37%
McKinsey「The state of AI in 2026」(1,719人・97か国、2026年8月)
デジタル製造ソリューションを全社展開できた製造業
約30%
McKinsey(7市場700社超、2018年7月)

これらの調査から、成果を出している企業に共通する点を6つ抜き出します。

組織の共通点:資源配分・KPI・責任者

共通点1:資源の7割を人とプロセスに使う

BCGは、AIで成果を出す企業の資源配分の目安を「人とプロセスに70%、技術とデータに20%、アルゴリズムに10%」としています。モデルの精度を上げることより、現場の業務をどう変えるか、誰が使い、誰が結果に責任を持つかに投資しているということです。

共通点2:テーマを損益の数字で定義している

McKinseyの調査でROIの欠如が61%の企業の障壁になっていたように、効果を数字で示せないテーマは本番に進めません。成果を出す企業は、テーマを決める段階でOEE(設備総合効率)、不良率、停止時間などの現場のKPIと、それが損益にどうつながるかを定義しています。

共通点3:責任者を経営層に置き、現場のオーナーを決める

McKinseyの2018年調査で、デジタル製造の責任者をC-level(経営層)に置いていた企業は36%でした。経営層の責任者は予算と優先順位を決め、現場の部門長がテーマのオーナーとして業務への組み込みに責任を持つ、という二層の体制が多く見られます。

データと人の共通点:基盤・外部連携・人材投資

共通点4:データ基盤をテーマ共通の資産として持つ

McKinseyの2018年調査では、工場の半数以上をカバーする全社的なデータレイクを持つ企業は20%だけでした。テーマごとにデータを集め直す企業は、2本目以降のテーマでも同じコストがかかります。中国工業互聯網研究院の院長は2025年9月、多くの智能化改造プロジェクトで投資の50〜60%をデータエンジニアリングが占めると述べています。データの準備は成功企業でも重い作業であり、だからこそ共通の資産として一度で整える意味があります。

共通点5:外部の専門家を使い、すべてを内製しない

MIT NANDAの「The GenAI Divide」(2025年8月)は、専門ベンダーからの購入・提携による生成AIの取り組みは約67%が成功する一方、内製は約3分の1の成功率にとどまるとしています。生成AIに限った調査ですが、すべてを自前で作ろうとせず、強みを持つ外部と組むことが成功率を上げることを示しています。国内でも、日立や富士通が顧客の現場に入り込むFDE(Forward Deployed Engineer)型の伴走を打ち出しています。

共通点6:人に投資し、AIを使う力を育てる

Rockwell Automationの2025年の調査(17か国1,560人)では、「AIを適用する能力」を極めて重要とする回答がほぼ半数に達し、前年の10%から急増しました。厚生労働省の令和8年版労働経済白書は、労使双方がAIと働くための人的資本に投資した場合に仕事の質が改善すると分析しています。同白書によると、AI研修を受けたAI利用者の割合は日本26.7%で、OECD平均の36.8%を下回ります。

製造業AIで成果を出す企業の6つの共通点を、組織、データ、人の3層に整理した図 組織 1 人とプロセスに7割 2 損益で定義 3 経営責任者と現場オーナー データ 4 データ基盤をテーマ共通の資産にする(MES・設備データ・品質記録の紐付け) 人 5 外部の専門家と組む 6 AIを使う力に投資する
成果を出す企業の6つの共通点を、組織・データ・人の3層で整理した図。

成功事例の数字の読み方

よくある質問

AIで成果を出す企業はどれくらいありますか

BCGの2024年調査では、PoCの先に進んで価値を出せている企業は26%でした。McKinseyの2026年調査では、EBITへの効果を報告した企業は37%です。調査ごとに定義は違いますが、いずれも半数に届いていません。

成功の最大の要因は何ですか

BCGの目安では成功要因の70%が人とプロセスにあります。製造業では、テーマを損益で定義すること、データ基盤を共通の資産にすること、現場の業務に組み込むオーナーを置くことが特に効きます。

内製と外注のどちらが成功しやすいですか

MIT NANDAの生成AIに関する調査では、専門ベンダーとの提携の成功率が約67%、内製が約3分の1でした。ただし外注した場合もデータと業務の設計は自社に残す必要があり、丸投げは別の失敗につながります。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。