国内で始まった自動検図の取り組み

検図(図面のチェック)の自動化は、国内の製造業で検証が進み始めた段階です。公表されている取り組みを並べます。

企業内容時期段階
新晃工業×ABEJA空調機などの設計業務でAIによる自動検図システムの検証を開始2026年9月29日発表検証
日立製作所3D CADの設計ルール違反を自動チェックする「設計ナレッジシステム」を提供開始2026年9月11日製品提供
キャディ設計レビューと量産準備状況を管理する「CADDi Design Review / Process Review」2026年閲覧時点製品提供

新晃工業とABEJAの取り組みは検証段階で、対象範囲や効果の数字はまだ公表されていません。日立は同じ系列の「品質ナレッジシステム」で、自社工場のトラブル対応事例の検索時間を約9割減らしたとしており(2026年6月、同社発表)、設計側にも同じ考え方を広げた形です。

いずれの取り組みも、検図のすべてをAIに任せるのではなく、設計ルールへの適合や過去の指摘との照合といった、明文化できる部分から自動化しています。

検図項目を3つに分ける

自動検図を進める最初の作業は、自社の検図項目を洗い出し、AIに任せられるかどうかで分けることです。

検図項目をルールで書ける項目、過去事例と照合する項目、経験と文脈に依存する項目の3つに分け、自動化の手段と担い手を示した図 A ルールで書ける B 過去事例と照合 C 経験・文脈に依存 例:表題欄の記入漏れ  標準部品の型番  穴と縁の最小距離手段:ルールエンジン  +図面・CAD読み取り担い手:自動 例:過去に不具合が出た  形状・組合せ  過去の検図指摘手段:RAG・類似検索  (生成AI)担い手:AIが指摘、人が判断 例:組立性・保守性  顧客固有の要求  コストと性能の妥協手段:設計レビュー  (AIは資料準備)担い手:人
検図項目の3分類。ルールで書ける項目から自動化し、経験に依存する項目は人に残す。

A(ルールで書ける項目)は、社内規格や設計基準に明文化されている項目です。表題欄の記入、標準部品の使用、寸法の最小値・最大値、穴と縁の距離などが該当し、図面やCADから値を取り出せれば、ルールエンジンで機械的にチェックできます。生成AIを使わなくても自動化できる部分で、最初に手を付けるべき範囲です。

B(過去事例と照合する項目)は、過去に不具合や手戻りが出た形状や組合せとの照合です。「この材質とこの表面処理の組合せで以前に剥がれが出た」といった知識で、不具合報告や検図記録をRAGで検索し、似た事例があれば指摘します。生成AIが効くのはこの範囲です。

C(経験・文脈に依存する項目)は、組立のしやすさ、保守性、顧客固有の要求、コストと性能の兼ね合いなど、設計の意図や文脈を踏まえた判断です。現時点では人が判断し、AIは関連資料の準備に使う程度にとどめます。

自動化の準備:ルールと記録を整える

AとBの範囲を自動化するには、AIより先にデータの準備が必要です。

  1. 検図チェックリストを集め、項目ごとにA・B・Cのどれに当たるかを分類する
  2. Aの項目について、判定条件を数値や条件式で書き出す(「穴と縁の距離は板厚の1.5倍以上」など)
  3. 過去の検図記録(指摘内容、指摘された図面、修正内容)を集め、Bの照合用データにする
  4. 不具合報告や設計変更の記録を、図番・品目コードと紐付ける
  5. 図面またはCADから、照合に必要な値を取り出す方法を決める(図面AI、CADのAPI)

最も時間がかかるのは2と3です。多くの職場では、検図のルールはベテランの頭の中にあり、チェックリストは一部しか書かれていません。過去の検図記録も、赤ペンの紙図面で残っていて電子化されていないことがあります。2D図面からの値の取り出しについては図面AIを参照してください。

効果の測り方

自動検図の効果は、次の指標で測ります。

  • 検図にかかる時間:1図面あたりの検図時間を導入前後で比べる
  • 指摘の漏れ:後工程(試作・量産立上げ)で見つかった図面起因の不具合の件数
  • 指摘の正しさ:AIの指摘のうち、設計者が修正に至った割合(誤指摘が多いと使われなくなる)

2つ目の指標を測るには、試作や量産で見つかった不具合を、原因となった図面と紐付けて記録する必要があります。製造側の不具合記録(MESや品質管理システム)と設計側の図面管理(PLM)をつなぐ仕組みがあると、自動検図の対象ルールを継続的に増やせます。

設計者に使われるための工夫

自動検図は、誤指摘が多いとすぐに使われなくなります。最初は確実に判定できるルールだけで始め、指摘の正しさを設計者に評価してもらいながら、ルールを増やしていくのが確実です。指摘には根拠となる規格の条項や過去の不具合事例を必ず添え、設計者が「なぜ指摘されたのか」をすぐ確認できるようにします。設計者が指摘を却下した場合はその理由を記録し、ルールの見直しに使ってください。この記録が、Bの範囲の照合データとしても役立ちます。

よくある質問

2D図面と3D CADのどちらで検図を自動化すべきですか

3D CADが正本になっている設計なら、CADのデータから値を直接取り出せるため、精度と手間の面で有利です。2D図面が正本の場合や、取引先から図面で受け取る場合は、図面AIで値を読み取ってからチェックします。

生成AIだけで検図はできますか

生成AIに図面を見せて「問題点を挙げて」と頼むと、もっともらしい指摘は返ってきますが、根拠が社内規格に基づいているとは限りません。ルールで書ける項目はルールエンジンで、過去事例との照合はRAGで根拠を示す形にするのが確実です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。