違いは「正解ラベル」があるかどうか
教師あり学習は、入力データと正解(ラベル)の組を学習し、新しい入力に対して正解を当てる手法です。画像に「良品」「傷」と付けて学習させる、過去の受注実績から来月の受注を予測する、といった使い方が当たります。需要予測のように、過去の実績そのものが正解になる場合も教師ありです。
教師なし学習は、正解ラベルを使わず、データの構造やまとまりを見つける手法です。似たデータをまとめるクラスタリング、データの次元を圧縮する主成分分析(PCA)、正常データの分布から外れたものを見つける異常検知が代表例です。正常データだけで学習する異常検知は「半教師あり」や「one-class」と呼ばれることもありますが、ラベル付けの手間がほとんど要らない点で、実務上は教師なしの側に置いて考えると分かりやすくなります。
| 観点 | 教師あり学習 | 教師なし学習(異常検知を含む) |
|---|---|---|
| 必要なもの | 入力と正解ラベルの組 | 入力データのみ(正常データ) |
| 出力 | クラス、数値の予測 | 異常度、グループ、圧縮した特徴 |
| 強み | 何を当てたいかが明確で、精度を測りやすい | ラベル付けのコストが小さく、未知のパターンも拾える |
| 弱み | ラベル付けのコスト、まれな事象のデータ不足 | 出力の意味づけに人の解釈が要る、過検出が出やすい |
製造業ではラベル付けのコストが選択を決める
製造業で教師あり学習を使うときの壁は、ラベルを付ける人とコストです。外観検査の不良ラベルは、限度見本を理解した検査員や品質保証の担当者でなければ付けられません。人によって判断が揺れると、ラベルそのものが不正確になります。設備の故障ラベルは保全記録から作りますが、保全記録が自由記述で残っていると、どの時点が故障の始まりかを決めるのに熟練者の時間がかかります。
もう1つの壁は、まれな事象のデータが集まらないことです。量産ラインでは不良率が低く、設備も壊れる前に部品を交換するため、故障に至るまでのデータはほとんどありません。
6用途でどちらが向くか
1. 需要予測:教師あり
過去の受注・出荷実績が正解として自然に残るため、教師ありが基本です。注意点は、欠品していた期間の出荷実績は本当の需要より少なく、正解そのものが歪んでいることです。
2. 品質予測・ソフトセンサー:教師あり
温度・圧力・流量などから、ラボで測る濃度や物性を推定するソフトセンサーは、ラボ分析値を正解とする教師ありです。分析値は数時間に1回しか取れないことが多く、正解の数が少ないことが課題になります。
3. 外観検査(不良の種類分け):教師あり
不良の種類ごとに処置が違う場合は、分類(教師あり)が必要です。ラベル付けの基準を限度見本で揃えることが前提になります。
4. 外観検査(良品学習):教師なし
良品画像だけで学習し、良品から外れたものを異常とします。不良が少ない立ち上げ期に向きます。
5. 予知保全:教師なしから始める
故障に至るデータがほとんどないため、正常運転のデータで異常検知を作るのが現実的です。日立のMIMII Dataset(設備音のデータセット)を使ったDCASE2020の課題も「正常音だけで学習し、未知の異常音を検出する」設定でした。保全記録とアラームを照合してラベルが貯まったら、故障診断(教師あり)に広げます。
6. 品質データの層別・要因探索:教師なし
多数の工程変数を主成分分析で圧縮し、多変量管理図で監視する、似た傾向のロットをクラスタリングでまとめる、といった使い方です。結果の解釈には工程を知る人が必要です。
ラベル付けの進め方はアノテーションの基礎、正解データの定義は正解ラベルの作り方で扱っています。
よくある質問
半教師あり学習とは何ですか
少数のラベル付きデータと多数のラベルなしデータを組み合わせて学習する手法です。製造業の文脈では、正常データだけで学習する異常検知を指して「半教師あり」と呼ぶこともあります。用語の使い方が文献によって違うため、何をラベルとして使っているかを確認してください。
教師なし学習の結果はどう評価しますか
異常検知なら、少数でも実際の異常サンプルを用意し、見逃し率と誤報の件数で評価します。クラスタリングは正解がないため、得られたグループが工程の知識で説明できるか、層別に使って改善につながったかで評価します。
ラベル付けは外注できますか
画像の囲みなど作業的な部分は外注できますが、良否の判断基準は社内の品質保証が決め、外注先の結果を抜き取りで確認する必要があります。判断基準が揺れたラベルは、量が多くても精度を下げます。
