費用は4区分に分けて見る

製造業のデータ基盤の費用は、次の4区分に分けると、見積もりの比較と社内の予算説明がしやすくなります。

区分主な中身初期費用の主な決定要因継続費用の主な決定要因
1 収集センサ・ゲートウェイ・PLC通信の設定、OPC UA/MQTTの収集ソフト、ネットワーク工事設備の台数と種類、古い設備の割合、配線の距離機器の保守、ソフトのライセンス、故障交換
2 蓄積ヒストリアン・時系列DB、レイクハウス・DWH、バックアップ既存ヒストリアンの有無、データの移行ストレージと計算の利用料、ライセンス
3 連携MESやERPとの連携開発、データモデルの設計、変換処理MESのAPIの有無、工場ごとのデータの差改修(品目追加・バージョンアップ対応)
4 運用監視、障害対応、データ品質の維持、利用者の問い合わせ運用設計、手順書、教育担当者の人件費、外部委託費

これにAIのモデル開発や運用の費用が別に乗ります。AIそのものの費用の考え方は製造業AIの導入費用の内訳で扱っています。

大きくなりやすいのは「連携」と「運用」

見積もりで目立つのはクラウドのライセンスやサーバーですが、実際に大きくなりやすいのは、3の連携と4の運用です。

連携の費用が大きくなるのは、MESや基幹システムとの接続が工場ごと、システムごとの個別開発になりやすいためです。MESにAPIがなくDBを直接読む構成にすると、初期は安くても、バージョンアップのたびに改修費がかかります。連携の方式による違いはMESとAIをつなぐ3方式で扱っています。

運用の費用は、見積もりに含まれていないことが多い項目です。センサの故障、通信の断、タグの追加、マスタの変更への対応は毎月発生します。McKinseyの2018年調査(7市場・700社超)では、デジタル製造ソリューションの全社展開を阻む障壁として、人材を挙げた企業が69%、ROIの欠如が61%でした。運用を担う人の手当てがないまま基盤を作ると、ROIが出る前に止まります。

全社展開の障壁に「人材」を挙げた企業
69%
McKinsey(7市場・700社超、2018年7月)
障壁に「ROIの欠如」を挙げた企業
61%
同上
デジタル製造ソリューションを全社展開できた企業
約30%
同上(業界別に20〜34%)

ライン数に比例する費用と、比例しない費用

横展開の計画で重要なのは、ライン数を増やしたときに費用がどう増えるかです。費用を次の3種類に分けて試算します。

ライン数に対する固定費、段階的に増える費用、比例費の積み上げ ライン数 →累計費用 固定段階比例 1234…
データ基盤の費用の伸び方。共通部分は最初のラインで大きく、2ライン目以降は比例部分が中心になる。
  1. 固定費(ライン数に比例しない):データモデルの設計、命名規則、蓄積基盤の構築、MES連携の共通部分、セキュリティ設計。最初のラインで大きく、2ライン目以降はほとんど増えない
  2. 段階的に増える費用:一定の規模を超えると増える費用。ブローカーやDBのサイズ変更、運用担当の増員、新しい工場への展開(工場ごとのネットワークとMESの違いへの対応)
  3. 比例費(ライン数・設備数に比例):センサとゲートウェイ、設備ごとの通信設定、タグの対応付け、ストレージの利用料

1ライン目の見積もりだけで投資判断をすると、固定費がすべて1ラインに乗るため、ROIが悪く見えます。逆に、固定費を作らずに1ライン専用の構成で始めると、2ライン目で同じ費用が再度かかります。投資判断は、計画するライン数まで展開したときの累計で行います。

社内で試算する手順

見積もりを取る前に、社内で概算を出しておくと、提案の比較がしやすくなります。

この試算で、運用費が全体の何割を占めるかを確認してください。運用の担当者をどう置くかはデータ基盤を誰が持つかで扱っています。段階的な導入の順番はデータ基盤の段階的導入ロードマップを参照してください。

よくある質問

データ基盤の費用はいくらくらいが相場ですか?

工場の規模、設備の古さ、MESの有無、既存のヒストリアンの有無で大きく変わるため、一律の相場は示しにくいのが実情です。同じ条件で比べるために、4区分ごとに見積もりを出してもらい、5年間の累計とライン数を増やしたときの増え方で比較することを勧めます。

既存のヒストリアンがある場合、費用は下がりますか?

蓄積の初期費用は下がることが多いです。ただし、AIに使うにはサンプリング周期や圧縮の設定を見直す必要があることがあり、その調整と、ヒストリアンからレイクハウスへの連携の費用は別にかかります。

補助金は使えますか?

設備投資やIT導入を対象とする補助金の中には、データ収集の機器やソフトが対象になるものがあります。要件や対象経費は制度と公募回ごとに違うため、最新の公募要領で確認してください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。