コンパニオン仕様とは何か
OPC UAの基本仕様は、データを型・階層・単位を持つオブジェクトとして表す仕組み(情報モデルの書き方)を定めています。しかし、「射出成形機ならどのデータをどの構造で公開するか」までは定めていません。それを業界・機器・用途ごとに定めたのがコンパニオン仕様です。
OPC Foundationは、コンパニオン仕様をOPC UAのデータモデル上に作られる業界標準の情報モデルと位置づけ、その多くは他の業界団体との共同ワーキンググループで策定されるとしています。機器の業界団体が自分たちの装置の標準データ構造を決め、それをOPC UAの形式で表現したものと考えると分かりやすいでしょう。2026年4月の発表では、コンパニオン仕様は430以上にのぼります。
コンパニオン仕様には、大きく3つの種類があります。
| 種類 | 対象 | 例 |
|---|---|---|
| 機器・業界別 | 特定の種類の設備 | 工作機械、射出成形機、ロボット、計測機器など |
| 横断的な情報モデル | 業界を問わない共通の概念 | ISA-95共通オブジェクトモデル(OPC 10030)など |
| 他規格との対応付け | 既存の制御規格とOPC UAの橋渡し | IEC 61131-3のファンクションブロックからOPC UAを使うための対応付け(OPC 30001)など |
AIのデータ収集で直接効くのは、1つ目の機器・業界別の仕様です。2つ目のISA-95モデルは、設備データとMESの情報を同じ枠組みで扱うときに使います。
自社設備に該当する仕様の探し方
コンパニオン仕様は、OPC Foundationのウェブサイトで一覧が公開されています。探すときは次の順に確認します。
- 設備の種類(工作機械、成形機、ロボット、包装機、計測器など)で一覧を検索する
- 該当する仕様があれば、策定した業界団体と版数、公開状態(リリース済みか策定中か)を確認する
- 自社の設備メーカーがその仕様に対応した製品を出しているか、メーカーに問い合わせる
- 対応していない既存設備は、ゲートウェイで仕様の構造に合わせられるかを検討する
注意したいのは、仕様が存在することと、手元の設備が準拠していることは別だという点です。既存設備の多くは仕様の策定前に作られており、OPC UAサーバを搭載していても独自の情報モデルで公開していることがあります。
設備カテゴリ別の考え方
AIのユースケースによって、コンパニオン仕様に求めるデータが変わります。仕様の詳細な項目は版によって異なるため、ここでは確認の観点を示します。
| 設備カテゴリ | よくあるAIユースケース | 仕様で確認したいデータ |
|---|---|---|
| 工作機械 | 工具摩耗予測、加工品質予測、稼働分析 | 主軸負荷・回転数、工具情報、加工プログラム番号、稼働状態、アラーム |
| 射出成形機 | 成形不良予測、条件最適化 | サイクルごとの成形条件と実績値、金型情報、ショットカウンタ |
| ロボット | 予知保全、サイクルタイム分析 | 軸ごとのトルク・温度、稼働時間、エラー履歴 |
| 計測・検査機器 | 品質予測のラベル、測定値の監視 | 測定値と規格値、測定条件、校正情報 |
確認のポイントは、AIに必要なデータが仕様の必須項目に入っているか、任意項目かです。任意項目は、メーカーによって実装されていないことがあります。また、成形機のショットや工作機械の加工プログラムなど「サイクル単位」のデータが取れると、MESのロットやシリアルとの紐付けが容易になります。
装置メーカーへの要求事項
コンパニオン仕様が最も効くのは、設備の新規購入や更新のときです。購入仕様書に要求事項を入れておくと、追加費用を抑えて情報モデルの整ったデータが手に入ります。
最後の定義ファイルの提供は見落とされがちですが、データ基盤側で情報モデルを読み込むときに必要になります。
コンパニオン仕様がない種類の設備でも、仕様の考え方を自社の情報モデル設計に応用できます。ISA-95の設備階層とタグの命名規則で自社標準を定め、ゲートウェイでその構造に合わせる方法です。命名規則は設備タグの命名規則、情報モデルの基本はOPC UAとは:AI活用で情報モデルが効く3つの理由を参照してください。
AI-ready化で何が変わるか
OPC Foundationは2026年4月20日、430以上のコンパニオン仕様をRAG・MCP・AI支援エンジニアリング向けの「AI-ready」形式に変換する取り組みを発表しました。仕様そのものを生成AIやAIエージェントが読める形にすることで、AIが設備の情報モデルを理解してデータを解釈したり、エンジニアリングを支援したりすることを狙っています。
これはまだ取り組みの段階で、どこまで実務で使えるかは今後の実装次第です(推測を含みます)。ただ、コンパニオン仕様に準拠した設備ほど、生成AIやエージェントとの連携でも有利になる方向は明確です。設備更新の計画があるなら、今の段階からコンパニオン仕様への準拠を調達条件に入れておく価値があります。詳しくはOPC UAコンパニオン仕様430超の「AI-ready化」で扱っています。
よくある質問
自社の設備に該当するコンパニオン仕様がありません。OPC UAを使う意味はありますか?
あります。コンパニオン仕様がなくても、OPC UAで型・階層・単位を持つ自社の情報モデルを定義すれば、設備横断で同じ構造のデータを扱えます。将来、仕様ができたときに対応付けもしやすくなります。
既存設備をコンパニオン仕様に対応させる費用はどれくらいですか?
設備メーカーのアップデートで対応できる場合から、ゲートウェイで変換が必要な場合、PLCの改修が必要な場合まで幅があります。設備台帳で機種と年代を確認し、メーカーに対応可否と費用を問い合わせるのが最初の手順です。
複数の仕様にまたがる設備はどう扱いますか?
ロボットを組み込んだ加工セルのように、複数の種類の設備で構成される場合は、それぞれの設備が該当する仕様で公開し、セル全体はISA-95の設備階層でまとめる方法が一般的です。
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