結論:設備側はOPC UA、配信はMQTTが多い

OPC UAとMQTTは、得意な範囲が違います。OPC UAは設備のデータを型・階層・単位を持つ情報モデルとして公開するのが得意で、設備やPLCに近い層で使われます。MQTTはブローカーを介して多数のシステムに軽量にデータを配信するのが得意で、上位のシステムやクラウドへの流通に使われます。

このため実際の工場では、「設備からはOPC UAで取り、エッジで変換してMQTTで配信する」という組合せが多く見られます。どちらか一方に統一することよりも、層ごとに役割を決めることが重要です。

8項目の比較

項目OPC UAMQTT
通信モデルクライアント・サーバが基本(Pub/Subも規定)ブローカーを介したpublish/subscribe
情報モデル型・階層・単位・意味を持つ。コンパニオン仕様で業界標準の構造がある定めない(Sparkplugや独自規約で補う)
接続の向きクライアントがサーバ(設備)に接続して読む発行側も購読側もブローカーに接続する(外向き接続で済む)
1対多の配信購読者ごとにサーバへの接続が必要ブローカーが配信するため、購読者が増えても設備の負荷は増えない
書込み・メソッド呼出し標準で対応(設定値の変更、メソッド実行)メッセージで命令を送ることは可能だが、応答の扱いは自分で設計
セキュリティ証明書による認証・署名・暗号化を仕様に内蔵TLSとブローカーの認証・アクセス制御で実現
実装の重さ比較的重い。仕様が大きく、実装の品質に差が出やすい軽量。小さな機器でも動く
標準OPC FoundationOASIS(MQTT 5.0、2019年)、ISO/IEC 20922(v3.1.1)

MQTT 5.0は2019年3月7日にOASIS標準となり、v3.1.1はISO/IEC 20922:2016として標準化されています。MQTTはトピックの名前空間とペイロードの形式を定めていないため、それを補う仕様としてSparkplug(ISO/IEC 20237)があります。

よくある組合せの構成

設備やPLCからOPC UAでエッジゲートウェイが読み取り、MQTTブローカーに配信し、MES、AI、ヒストリアン、クラウドが購読する構成図 成形機(OPC UA) 工作機械(OPC UA) PLC(独自通信) 後付けセンサ エッジゲートウェイ変換・命名・前処理 MQTTブローカー MES エッジAI ヒストリアン クラウド基盤 OPC UA ほか(設備側)MQTT(配信側)
よくある組合せ。設備側はOPC UAで意味付きのデータを取り、エッジでMQTTに変換して上位に配信する。

この構成では、エッジゲートウェイが重要な役割を持ちます。設備ごとに異なる通信方式(OPC UA、各社のPLC通信、Modbusなど)からデータを読み、全社共通の命名規則と単位に揃え、MQTTで配信します。設備側の違いをエッジで吸収することで、上位のMES・AI・データ基盤は設備の違いを意識せずにデータを使えます。

この構成のもう一つの利点はセキュリティです。MQTTでは、エッジゲートウェイもMESもブローカーに外向きに接続します。上位システムが制御ネットワークの設備に直接接続する必要がないため、ネットワークの境界を設計しやすくなります。ゾーンとコンジットの設計はIEC 62443とAI・データ基盤で扱います。

AI用途での使い分け

AIのデータの使い方によって、どちらのプロトコルを経由させるかが変わります。

AIの使い方適した経路理由
エッジでのリアルタイム推論(外観検査・異常検知)設備からOPC UAで直接、またはエッジ内で処理遅延を抑え、ブローカーを経由する必要がない
複数システムへの推論結果の配信MQTTMES・アンドン・ダッシュボードが同時に購読できる
学習データの蓄積MQTT→ヒストリアン・レイクハウス配信経路から分岐して保存する
設備の設定値の変更(推奨値の反映)OPC UAの書込み(承認を経由)書込みの確実性と認証を仕様で担保できる
情報モデルを使ったデータの意味付けOPC UA(コンパニオン仕様)型・単位・階層を設備から取得できる

高周波の振動波形や画像は、どちらのプロトコルでも全量を上位に流すのは負荷が大きくなります。エッジで特徴量に変換し、特徴量と判定結果だけを配信し、生データは別の経路で保存する設計が一般的です。

選定時に確認すること

使うシステムが少なく、読取りだけで済む小規模な構成なら、OPC UAのクライアントでヒストリアンやAIアプリが直接読む形でも十分です。システムやAIのテーマが増えてきた段階で、MQTTブローカーを中心とする配信型に移行するのが現実的な順序です。それぞれの詳細はOPC UAとは:AI活用で情報モデルが効く3つの理由とMQTTとSparkplugの違いを参照してください。

よくある質問

OPC UAのPub/Subがあれば、MQTTは不要ですか?

OPC UA Pub/SubはMQTTなどをトランスポートとして使えるため、両者は組み合わせて使えます。対応する製品やツールの数はMQTTの方が多いので、上位のクラウドサービスやデータ基盤との接続のしやすさで判断してください。

Modbusしか使えない古い設備はどうしますか?

エッジゲートウェイでModbusのレジスタを読み、命名と単位を付けてMQTTで配信するのが一般的です。レジスタの意味は設備の資料から調べる必要があるため、対応表を作って管理してください。

クラウドに直接OPC UAで接続してもよいですか?

クラウドから工場内の設備に向かって接続する構成は、制御ネットワークに外部から入る経路を作るため避けるべきです。工場内のエッジからクラウドへ外向きに送る構成にしてください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。