調達額と評価額の推移

Figure AIの評価額(Series C、10億ドル超調達)
390億ドル
Wikipedia/Runtime Wire(2025年9月)
Apptronikの評価額(報道)
50億ドル超
Runtime Wire(2026年2月の延長調達時)
ApptronikのSeries A(Mercedes-Benz等が参加)
4億300万ドル
Hughes Hubbard & Reed(2025年)

Figure AIは2022年創業で、2024年2月に6.75億ドル(評価額26億ドル)、2025年9月に10億ドル超(評価額390億ドル)を調達しました。1年半で評価額が約15倍になった計算です(当サイトの計算)。

Apptronikは2025年に4億300万ドルのSeries Aを調達し、Mercedes-BenzやGoogleなどが参加しました。2026年2月には5億2,000万ドルの延長調達を行い、Series Aの累計は9億3,500万ドル超、評価額は50億ドル超と報じられています。

Agility Roboticsは2024年11月にSchaefflerから少数株出資を受け、SchaefflerがDigitを購入して2030年までにグローバル100工場への大規模展開を目指すと発表しました。その後、Churchill Capital Corp XIとの合併による上場に合意したと報じられています。

企業主な調達・資本政策製造業パートナー公表されている実稼働の情報
Figure AI(米)2024年2月 6.75億ドル、2025年9月 10億ドル超(評価額390億ドル)BMWBMWスパータンバーグで11か月、9万部品超(同社発表)
Apptronik(米)2025年 Series A 4億300万ドル、2026年2月 延長5.2億ドルMercedes-Benz、GXO、JabilMercedes-Benzで試験中(台数非公表)
Agility Robotics(米)Schaeffler出資(2024年11月)、SPAC合併で上場合意(報道)Schaeffler、GXO、Toyota Motor Manufacturing Canada実生産での稼働6.5万時間(同社サイト)
NEURA Robotics(独)公表資料で調達額を確認できず公表資料で確認できずCEOが10億ユーロの受注確保と発言(2025年1月)

評価額と実稼働の乖離

評価額の大きさに対して、工場での稼働について公表されている情報は限られています。

Mercedes-Benzは2024年3月、Apptronikの「Apollo」を自社の製造拠点で試験導入する契約を結びました。狙いは「低スキルで身体的にきつい手作業」の自動化で、組立キットの配送や部品検査などで試しています。台数は公表されていません。2026年6月のRuntime Wireの記事は、Mercedes-Benzでの取り組みを「パイロットの実証段階であり、スケール展開ではない」と評しています。

Figureは、BMWスパータンバーグ工場での11か月の稼働を数字で公表しており、ヒューマノイド企業の中では情報開示が多い部類です。ただし、BMWの引用では10か月とされる表記の揺れや、生産への寄与の中身が不明確だという指摘もあります。詳しくはFigure 02のBMW稼働データを検証で扱っています。また、Figureの公式サイトは現在、Figure 03を家庭向けの汎用ヒューマノイドとして打ち出しており、工場用途からの軸足の変化にも注意が必要です。

Agilityは公式サイトで実生産での稼働6.5万時間を掲げていますが、何台のロボットが何か所で稼働した合計かは示されていません。また、協調安全に対応したDigit 5は開発中で、「一部安全機能は開発中」「安全機能はすべての運用リスクを排除しない」と明記しています。

ヒューマノイド企業の情報の種類 多く公表される情報 調達額・評価額 提携先の企業名・デモ動画 将来の出荷目標 判断に必要だが少ない情報 稼働台数・稼働率 サイクルタイム・故障頻度 1台あたりの費用・契約形態
資金の大きさと開示の量は比例していない。製造業が判断に使えるのは右側の情報。

市場予測も桁が違う

ヒューマノイドの将来市場の予測は、前提によって大きく違います。Morgan Stanleyは2025年5月、ヒューマノイド市場がサプライチェーンと保守を含めて2050年に5兆ドル超、稼働台数10億台超になると予測しました。高所得国での1台あたりコストは、2024年の約20万ドルから2028年に約15万ドル、2050年に約5万ドルに下がると見ていますが、普及は2030年代半ばまで緩やかと想定しています。

一方、国際ロボット連盟(IFR)は2025年8月のポジションペーパーで、ヒューマノイドの大量普及がいつ起こるかは不確実だとし、既存の産業用ロボットを置き換えるのではなく補完する存在と位置付けました。欧州企業は短中期の製造業導入に慎重である一方、中国は量産目標を設定していると整理しています。予測の比較はヒューマノイド市場予測の食い違いで詳しく扱っています。

製造業はどう読むべきか

ヒューマノイドの情報を自社の投資判断に使うなら、調達や提携のニュースではなく、稼働の実績データを集めることを優先します。具体的には、どの工程で、何台が、何時間、どのサイクルタイムで、人と同じ空間か柵の中かを確認します。

また、ヒューマノイドに頼らなくても、既存の産業用ロボットや協働ロボットに基盤モデルを組み合わせる方法で解ける工程は多くあります。工程ごとの向き不向きはヒューマノイドか専用ロボットかで整理しています。

よくある質問

ヒューマノイドの価格はいくらですか

各社とも量産品の公式な価格表は公表していません。Morgan Stanleyは高所得国での1台あたりコストを2024年に約20万ドルと推計していますが、これは調査会社の推計値です。

日本の工場でヒューマノイドを試すべき時期ですか

欧米の大手自動車メーカーでもまだ試験段階の例が多く、量産ラインへの本格展開の公表例は限られます。技術の動向を追いつつ、まずは既存ロボットで自動化できていない工程を洗い出しておくのが現実的です。

中国のヒューマノイド企業との違いは何ですか

中国では政策による量産目標と、地方政府や国有企業の調達が市場を動かしている面があり、欧米とは資金の出し手が異なります。中国勢の動向は別記事で扱っています。

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。