手順書の下書きは「何を入力にするか」で4パターンに分かれる

生成AIで作業手順書を下書きする方法は、入力に使う情報で4つに分かれます。

パターン入力向く場面注意点
1. 既存文書の変換紙・PDFの手順書、Excelの作業標準既存手順書のデジタル化、様式の統一元の手順書の誤りもそのまま移る
2. CAD・BOMから生成3D CAD、組立BOM、類似品の手順書新製品・派生品の組立手順作業のコツ・注意点は入らない
3. 作業動画から生成熟練者の作業動画文書化されていない作業の標準化撮影条件と従業員の同意が前提
4. 口述・インタビューから生成熟練者への聞き取りの録音判断を伴う作業、異常時の対応熟練者の確認時間が必要

Deloitteは2025年9月のレポートで、製造業のエージェント型AIのユースケースの1つに「CAD・BOM・品質メモからの作業指示書の生成」を挙げ、生産技術者による承認ゲートを置くことを推奨しています。下書きの自動化と人の承認は、セットで考えるのが前提です。

既存文書、CADとBOM、作業動画、口述の4入力から下書きを生成し承認を経て公開する流れ 1 既存文書 2 CAD・BOM 3 作業動画 4 口述 生成AIで下書き 現場確認+承認 公開版管理
4つの入力から下書きを作り、共通の承認フローを通して公開する。

パターン1・2:既存文書とCAD・BOMからの生成

既存文書の変換は、最も始めやすいパターンです。紙やPDFの手順書を読み取り、社内の標準様式(作業要素、ポイント、理由、写真欄)に揃えます。Tulipの「AI Composer」は、印刷されたSOPや工程PDFなどの文書を読み取り、Tulipの現場アプリを自動生成する機能で、生成結果は人がレビュー・修正して選択的に適用する設計になっています(同社、2026年1月)。

CAD・BOMからの生成では、組立BOMの階層と部品の属性から組立順序の案を作り、類似品の手順書を参照して作業要素を埋めます。部品の組付け順や使う工具の候補は出せますが、作業のコツ、品質のポイント、なぜその順序なのかという理由は、BOMにもCADにも書かれていません。ここは生産技術者と熟練者が書き足す部分です。

パターン3・4:動画と口述からの生成

文書になっていない作業を手順書にするには、動画か口述を入力にします。動画からの抽出は作業動画から手順と改善点を抽出で詳しく扱っています。

口述からの生成は、異常時の対応や判断を伴う作業に向きます。熟練者に「この作業で気をつけていること」「こうなったらどうするか」を話してもらい、録音を文字起こしして、生成AIで手順と判断基準に整理します。整理した結果を熟練者本人が確認する時間を、必ず計画に入れてください。熟練者の時間が取れないことが、このパターンで最も多い失敗原因です。

重要工程は承認フローを必須にする

下書きの品質がどれだけ高くても、手順書として公開するには承認が必要です。工程の重要度で承認の重さを変えます。

公開後はMESと版管理につなぐ

作った手順書は、文書管理システムで版管理し、MESの作業指示から品番・工程に応じて表示される形にすると、現場で旧版が使われる事故を防げます。品番・工程コード・改訂番号のメタデータは、作成時から付けておくと、後で手順書を検索させる(RAG)ときにもそのまま使えます。検索側の設計は作業手順書RAGの作り方を参照してください。

Tulipは2026年1月、三菱電機が主導した1億2,000万ドルのシリーズDを調達し、三菱電機はTulipのAIアプリの展開契約も結んでいます。2026年10月には、既存アプリ・データ・SOPからアプリの下書きを作る「Authoring Agent」も発表されました(いずれも報道・同社発表)。こうした現場アプリ基盤は、手順書の生成と現場端末での表示を一体で扱う選択肢です。製品の位置づけはTulip AI Composerとはで扱っています。

よくある質問

生成AIで作った手順書は、監査で問題になりませんか?

作成手段は問われないことが一般的で、問われるのは承認と版管理の記録です。誰が確認し、いつ承認したかを残しておけば、人が書いた手順書と同じ扱いになります。顧客や業界の要求がある場合は、事前に確認してください。

写真や図も生成AIで作れますか?

画像生成AIで作業の図を作ることはできますが、実際の部品や治具と違う絵になりやすく、誤解の原因になります。写真は実物を撮影し、生成AIは写真の配置や注記の案を作る範囲に限るのが安全です。

多品種で手順書の数が多い場合、どこから始めればよいですか?

派生品の多い品番群から始めると効果が大きくなります。基準となる品番の手順書を人が整備し、派生品は差分(部品・工具・数値の違い)から生成AIで下書きして、差分の箇所だけを重点的に確認します。

この記事に出てくる用語

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。