第1弾15件の全体像

2025年11月27日、南京で開かれた世界智能制造大会で、中国初の領航級智能工厂15件が発表されました。領航級は、智能工厂梯度培育の4段階(基础级・先进级・卓越级・领航级)の最上位で、「世界の標杆」と位置付けられています(段階の仕組みは智能工厂梯度培育の4段階を参照)。

工信部の発表と報道による15工場の全体の数字は次のとおりです。

生産効率の平均向上率(第1弾15工場)
29%
工信部(北京商报 2026年1月21日)
不良率の平均低減率(同上)
47%
同上
AIが浸透した業務シーンの比率
70%超
工信部・谢存(SMM 2026年1月21日)
蓄積された垂直領域モデルの数
6000超
同上

ほかに、重要な智能制造装备・工業ソフトが1700超導入されたこと、15工場が川上・川下の1300超の工場の改造を牽引したことが公表されています。領航級の2024年の平均利益率は約10%で、大規模工業企業の平均の約2倍とされます。

個別工場の公表値

15工場のすべての名称と個別の数字は、当サイトの調査では確認できていません。報道で領航級として名前と数字が確認できた工場を挙げます。

工場公表された取り組みと数字出所
海康威视(Hikvision)AIラインの効率が従来ラインに比べ243%増、段取り替え時間50%減中国经济周刊 2026年1月
徐工(XCMG)受注から納品までの周期が55%短縮澎湃 2025年12月
南钢(南京鋼鉄)スマート運営センターで生産安定性10%向上、産量2%増、コスト10%減科技日报 2025年11月
上汽通用五菱(SGMW)運営大模型EOAIで意思決定を閉ループ化、AI応用シーン比率75%超新出行 2025年11月
海尔 中央空調互聯工場AIの自動スケジューリングで設計周期62%短縮、納期20%短縮、生産効率32%向上海尔 2025年11月

同じ報道では、領航級と並べて、格力(珠海)がAIモデル155個を組み込んで管理効率を46%高めたこと、中联重科の掘削機の生産タクトが6分/台になったことも紹介されています。これらの工場が領航級の15件に含まれるかは、当サイトでは確認できていません。

海康威视、徐工、南钢、上汽通用五菱、海尔の5工場が、効率、リードタイム、品質・安定性、コストのどの指標を公表しているかを示すマトリクス 工場 効率 リードタイム 品質・安定性 コスト 海康威视+243%段取り-50% 徐工-55% 南钢産量+2%安定性+10%-10% 上汽通用五菱効果値ではなくAI応用シーン比率75%超を公表 海尔 中央空調+32%設計-62%
公表された領航級工場の成果の性質。効率・リードタイム・品質・コストの4軸に分かれ、工場ごとに出している指標が違う。

読むときの前提

数字の扱いでもう1つ注意が必要なのは、選ばれた工場はもともと各業界のトップ企業の主力工場だという点です。領航級の利益率が平均の約2倍というのも、認定の効果というより、選定の対象が高収益の企業であることを反映している可能性があります(推測)。

日本の工場が参考にできる点

数字そのものより参考になるのは、取り組みの構造です。

1つ目は、運営の中枢をつくっている点です。南钢のスマート運営センター、上汽通用五菱の運営大模型EOAI、海尔の自動スケジューリングは、いずれも工場の運営の判断を1か所に集め、データとAIで回す仕組みです。個別の工程にAIを点で入れるのではなく、計画・生産・品質の判断をつなぐ層を作っています。

2つ目は、垂直モデルの数です。15工場で6000超ということは、1工場あたり平均で数百のモデルを運用していることになります。これだけの数を運用するには、モデルの管理と、データを共通の構造で持つ基盤が欠かせません。

3つ目は、サプライチェーンへの波及を評価に入れている点です。15工場が川上・川下の1300超の工場の改造を牽引したという公表は、領航級の評価が自社工場の中だけで閉じていないことを示しています。日系のサプライヤーにとっては、中国の大手の顧客から、データ連携やスマート化の水準を求められる場面が増えることを意味します。

中国のスマート工場とWEFの灯塔工場は別の制度ですが、選ばれる企業は重なっています。灯塔工場のAI事例は中国の灯塔工場のAI事例で扱っています。

よくある質問

領航級の15工場の全リストはどこで見られますか?

2025年11月27日の発表を報じた科技日报などに名簿が掲載されています。当サイトの調査では、15件すべての名称と個別の数字を一次情報で確認できなかったため、この記事では個別の数字が確認できた工場のみを掲載しました。

第2弾の領航級はいつ選ばれますか?

2026年度の培育行動は2026年7月15日付で通知され、領航級の申請枠は各省の累計卓越級の10%が上限とされています。工信部は2026年1月に「一批领航级智能工厂将亮相」(領航級の工場が順次登場する)と説明しており、第2弾の選定が進むと見られます。

この記事に出てくる用語

用語集(日・英・中)をすべて見る

この特集について

中国の「AI+製造」を追う

工業大模型、政策と補助金、日系工場への影響。日本語圏に届いていない一次情報 全75本

  1. 中国「人工智能+」行動意見とは:2027年に智能体普及70%超が製造業に意味すること
  2. 中国「AI+製造」専項行動(2026年1月)全解説:7分野21措置と2027年目標
  3. 中国データ越境規定(16号令)と日系工場:製造データを日本へ送れるか
  4. 中国「AI+製造」が日系企業に与える影響:競争・調達・規制の3つの視点
特集の記事をすべて見る →

この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。