2025年6月:国が工場を4段階で数える物差しを作った
上海市が2026年10月12日に始めた行動で、工場の側から見て変わらないことがあります。工場を測る物差しです。上海の目標に出てくる「先進級」「卓越級」「領航級」は、国が2025年から運用している智能工厂(スマート工場)の認定段階の名前で、上海独自の基準ではありません。
その物差しが整ったのは2025年6月です。中国証券報(2025年6月24日)によると、同年度の「智能工厂梯度培育行动」で、工場は次の4段階に分けられました。
| 段階 | 重点 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 基础级 | デジタル化改造・ネットワーク接続 | 一定規模以上の企業が自己評価で名乗る |
| 先进级 | デジタル化転換・ネットワーク協同 | 地域・業界の標杆 |
| 卓越级 | 上記に知能化の高度化を加える | 全国の標杆。AI応用の探索が申請条件 |
| 领航级 | 知能化の変革、未来の製造方式の探索 | 世界の標杆。業界の主要企業が対象 |
上位の段階は、1つ下の段階の認定を受けていることが申請の前提です。制度の全体像と件数の推移は智能工厂梯度培育の4段階で扱っています。
2025年11月〜2026年1月:領航級15件と「AI+製造」の国家目標
2025年11月27日、南京で開かれた世界智能制造大会で、最上位の領航級の第1陣15件が発表されました(科技日報、同日)。同じ記事は、数百の智能工厂で製品開発期間が平均29%短く、生産効率が平均で約22%上がったとしています。認定を受けた工場の側の集計で、未認定の工場との比較ではない点は差し引いて読む必要があります。
2026年1月には、工信部など8部門が「"人工智能+制造"专项行动实施意见」を出しました。中国政府網に転載された人民日報海外版の解説(2026年1月10日)は、2027年までに工業分野の高品質データセット100、典型的な応用シーン500といった目標を挙げています。中身は「AI+製造」専項行動の全解説にまとめています。工業エージェントの数値目標は、報道によって書き方が分かれているため、「工業エージェント1000個」の検証もあわせて確認してください。
2026年7月〜9月:年度通知と全国先进制造业大会
2026年7月15日付で、工信部・国家発展改革委・財政部・国資委・市場監管総局・国家データ局の6部門が、2026年度の智能工厂梯度培育の通知を出しました(澎湃新闻、7月22日)。通知は、先進級を省レベルの当局または中央企業が認定し、名簿を工信部に報告する仕組みとしています。卓越級の申請締切は8月15日で、地方当局には工業エージェント(工业智能体)の開発を支援するよう求めました。詳細は2026年度の智能工厂梯度培育通知で扱っています。
9月16〜17日には北京で全国先进制造业大会が開かれ、習近平総書記の指示として「智能化、绿色化、融合化」の方向が示されました(新華網、9月18日)。上海市の発表は、今回の行動をこの大会の精神を具体化するものと位置づけています。
2026年10月12日:上海が2028年に置いた9つの数字
上海市は10月12日、第26回中国国際工業博覧会の開幕式で「上海市加快发展新一代智能制造行动」を始めました(上海市政府サイト掲載の解放日報記事、10月13日)。行動は4つの工程と19項目の重点任務で構成されます。4つの工程は、供給(技術・装備・サービス)の高度化、「AI+製造」の基盤づくり、智能工厂の段階的育成、プラットフォーム・中試(パイロット生産)・集積・標準・人材を含む環境づくりです。19項目の中身は、確認できた報道の範囲では公表されていません。
2028年の目標として示された数字は次のとおりです。
| 目標(2028年) | 数値 | 現状として示された数字 |
|---|---|---|
| 先進級智能工厂 | 500 | 国家領航級2・国家卓越級28 |
| 製造業のAI応用シーン | 2000超 | 記載なし |
| 業界特化(垂域)大規模モデル | 10 | 記載なし |
| 高水準の智能体(AIエージェント) | 300 | 記載なし |
| 工業用ロボット密度 | 1万人あたり600台 | 記載なし |
| 工場に入る人形ロボット | 8000台 | 記載なし |
| AIを組み込んだ新型スマート製造装備の産業規模 | 2000億元超 | スマート製造装備の生産額1500億元超 |
| スマート製造システムインテグレーションの産業規模 | 1000億元 | 600億元超 |
出典:上海市政府サイト(解放日報、2026年10月13日)、界面新闻(同年10月12日の発表を報道)。現状の数字のうち金額2項目は界面新闻の記事による。
このほか、重点製造企業の智能工厂の全面カバーと、智能工厂でのAI応用の全面普及が定性的な目標として書かれています。重点製造企業の範囲は出典では定義されていません。
人形ロボット8000台は、台数の目標であって、どの業種・どの工程に入れるかは示されていません。中国の人形ロボット政策の流れは具身智能・人形ロボット政策で整理しています。
年表から日系工場の担当者が読み取ること
年表を順に並べると、国が物差しを作り(2025年6月)、上位の事例を示し(2025年11月)、AIの国家目標を置き(2026年1月)、申請枠と地方への要請を決め(2026年7月)、地方が数値目標を出す(2026年10月)という順で進んでいます。編集部の見立てでは、他の省・市も同じ物差しで2028年前後の数字を出してくる可能性があります(推測)。
上海に工場を持つ日系企業にとって、認定を申請するかどうかは経営判断です。ただ、申請しなくても、取引先や地方当局との会話で「先進級に相当するか」「AI応用シーンはいくつあるか」と聞かれる場面は増えると考えられます(推測)。そのとき答えの根拠になるのは、設備の稼働・品質・作業実績のデータが工程ごとに揃っているかどうかです。AI応用シーンを数えるには、まずどの工程のどのデータでAIが動いているかを台帳にする必要があります。
よくある質問
上海の行動は国の「AI+製造」専項行動と別の制度ですか
別の文書ですが、物差しは共通です。上海の目標は国の智能工厂の4段階(基础级・先进级・卓越级・领航级)の名前で書かれており、上海市は国の全国先进制造业大会の精神を具体化する行動と位置づけています。
人形ロボット8000台はすでに配備計画が決まっているのですか
確認できた発表では、2028年までの台数目標が示されただけで、業種・工程・調達先・補助の仕組みは公表されていません。台数を受注見通しとして読むのは早すぎます。
日系の工場も先進級の認定を受けられますか
2026年度の国の通知は、中国国内の一定規模以上の工業企業を対象にしており、外資を除外する規定は出典の範囲では確認できません。上海市の具体的な申請要領が出た段階で、対象範囲を確かめる必要があります。
- 上海将实施四大工程 推动人工智能与制造业深度融合 到2028年 8000台人形机器人进工厂(上海市人民政府サイト/解放日报、2026年10月13日)
- 上海启动加快发展新一代智能制造行动,到2028年推动8000台人形机器人进工厂(界面新闻、2026年10月12日)
- 为加快构建现代化产业体系铸牢骨干(新华网、2026年9月18日)
- 工信部等六部门部署开展2026年度智能工厂梯度培育行动(澎湃新闻、2026年7月22日)
- 推动AI与制造业双向赋能(中国政府网/人民日报海外版、2026年1月10日)
- 我国首批15家领航级智能工厂名单公布(科技日报、2025年11月27日)
- 打造智能制造"升级版" 2025年度智能工厂梯度培育行动开启(中国证券报、2025年6月24日)
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