税制は「採択」がない代わりに「手続きの順番」がある
補助金は公募と審査があり、採択されなければ使えません。税制の優遇は、要件を満たし、必要な手続きを踏めば適用できるのが基本です。そのため、AI投資の資金計画では、補助金が不採択でも税制の優遇は受けられるように準備しておくと、計画の確実性が上がります。
ただし、税制の多くは「設備を取得する前に計画の認定や証明書の取得が必要」といった手続きの順番が決まっています。取得してから気づいても間に合わない場合があります。
検討する3つの制度
中小製造業がAI・DX投資で検討することが多いのは、次の3つです。税率・控除率・対象設備の金額要件・適用期限は本記事では示しません。いずれも毎年の税制改正で見直されるため、中小企業庁・国税庁の最新の資料と、顧問税理士に確認してください。
| 制度 | 優遇の形(概要) | AI投資での対象になりうるもの | 事前の手続き |
|---|---|---|---|
| 中小企業経営強化税制 | 即時償却または税額控除を選択できる制度として知られる | 生産性向上に資する機械装置、ソフトウェアなど | 経営力向上計画の認定。設備の類型によって工業会の証明書や経済産業局の確認が必要 |
| 中小企業投資促進税制 | 特別償却または税額控除 | 一定の機械装置、ソフトウェアなど | 制度の要件を確認 |
| 賃上げ促進税制 | 給与等の増加額に応じた税額控除 | AIで浮いた工数を付加価値の高い業務に振り向け、賃上げにつなげる場合に関係する | 賃上げの実績に基づき申告 |
上2つは設備投資に直接かかる制度、3つ目は賃上げの結果にかかる制度です。AI投資と賃上げを一体の計画として考えると、3つ目も検討の対象になります。
AI投資で確認すべき4つのポイント
1. AIの部分は「ソフトウェア」か「機械装置」か
AI外観検査装置のように、カメラ・照明・PCと判定ソフトを一体で導入する場合、税務上どの資産区分になるかで、対象になるかや要件が変わります。ベンダーの見積もりを、機械装置・ソフトウェア・役務(設定・学習作業)に分けてもらい、税理士と区分を確認します。
2. クラウド利用料は対象外になりやすい
設備投資の税制は、取得した資産が対象です。クラウドのAIサービスの月額利用料は資産の取得ではないため、通常は対象になりません。サブスクリプション型のAIを中心に使う場合は、税制より補助金(デジタル化・AI導入補助金など)が合う場合があります。
3. 証明書を出せるかをベンダーに確認する
中小企業経営強化税制の一部の類型では、設備メーカーや工業会による証明書が必要になります。AIベンダーやSIerが証明書の発行手続きに対応しているかを、発注前に確認してください。海外製品やスタートアップの製品では、対応していない場合があります。
4. 補助金との併用の扱い
補助金で取得した設備に税制の優遇を併用する場合、補助金相当額を差し引いた金額が対象になる、圧縮記帳との関係を整理する必要がある、などの論点があります。併用の可否と計算方法は、制度ごとの手引きと税理士に確認してください。
税制と補助金を組み合わせる考え方
AI投資の資金計画では、補助金と税制を次のように位置づけると整理しやすくなります。
- 補助金:採択されれば投資額の一部が戻る。ただし不採択のリスク、賃上げ要件などの条件がある
- 税制:要件を満たせば使え、採択の不確実性がない。ただし利益が出ていて納税額がある年でないと効果が限られる
- 両方:併用できる場合でも、補助金分を差し引いた額が税制の対象になるなど、単純な足し算にはならない
投資回収の試算では、補助金と税制の効果を別々の行に分けて計算し、補助金が不採択の場合のケースも作っておきます。試算の手順は製造業AIのROI試算、補助金の全体像は製造業のAI導入に使える補助金・助成金8選を参照してください。
よくある質問
赤字の会社でも税制の優遇を使う意味はありますか
税額控除は納税額がないと効果が出にくく、特別償却や即時償却も赤字の年には効果が限られます。繰越の扱いは制度ごとに異なるため、税理士に確認してください。赤字の場合は補助金のほうが効果が分かりやすいことが多くあります。
DX認定を取ると税制で有利になりますか
税制や補助金の要件・加点にDX認定などの制度が関係する場合があります。関係の有無は年度ごとに変わるため、各制度の最新の要件で確認してください。DX認定についてはDX認定制度とAI投資で扱っています。
税制の対象かどうかは誰に聞けばよいですか
制度の概要は中小企業庁・国税庁の資料、個別の適用は顧問税理士、設備が対象類型に当たるかの証明はメーカーや工業会、と役割が分かれます。発注前に三者に確認しておくと確実です。
