対象の5制度と、チェックリストで扱う範囲

チェックリストは、製造業のAI投資で使われることの多い次の5制度を対象にしています。制度ごとの要件の違いは別表にまとめ、共通の準備作業を30項目に整理しました。各制度の概要は製造業のAI導入に使える補助金・助成金で解説しています。

制度補助上限・補助率(中小機構 補助金活用ナビ等の記載による)AI投資での注意点
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)通常枠:業務プロセス1〜3つで5万〜150万円、4つ以上で150万〜450万円。補助率は中小企業1/2(最低賃金近傍の事業者は2/3)登録されたIT導入支援事業者を通じた申請で、対象は登録済みITツールに限られる。受託開発のAIは対象にしにくい
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金革新的新製品・サービス枠は最大3,500万円(補助率は中小1/2、条件により2/3)付加価値額の年平均成長率4.0%以上、賃上げ年平均3.5%以上(未達なら返還)などが基本要件
中小企業省力化投資補助金一般型は最大1億円。補助金額1,500万円までが1/2、超える部分が1/3。カタログ注文型は最大1,500万円一般型はAI外観検査やロボットセルなど個別現場に合わせた設備に向くが、詳細な事業計画が要る
中小企業成長加速化補助金最大5億円、補助率1/2以内売上高10億円以上100億円未満、投資額1億円以上(税抜)、申請時までに「100億宣言」の公表が必要
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コースなど)コースにより異なるAI研修の費用が対象。2026年5月の改訂以降、一部の申請で価格妥当性の様式の提出が必要

金額・要件は2026年10月時点で各制度の公式情報・中小機構の補助金活用ナビに載っていたものです。公募回ごとに変わるため、申請前に必ず最新の公募要領で確認してください。

30項目の構成:6つの段階

30項目は、準備の順番に沿って6段階に分かれています。各項目に「目安の着手時期(締切の何週間前か)」「担当」「完了日」の欄があります。

段階項目数主な項目着手の目安
1 制度の選定5対象経費が制度に合うか、事業者の要件(業種・従業員数・売上高)、併用の可否、過去の受給歴締切の12週前
2 アカウントと登録4電子申請用アカウント(GビズIDプライム等)の取得、制度が求める事前登録・宣言、IT導入支援事業者の選定、100億宣言(成長加速化)12〜10週前
3 事業計画7現状の課題、AI導入の内容、効果の数値(付加価値額・労働生産性)、実施体制、スケジュール10〜4週前
4 賃上げ・要件の確認5給与支給総額の現状値、賃上げ計画、事業所内最低賃金、未達時の返還額の試算8〜4週前
5 見積と書類6相見積、見積の有効期限、決算書、納税証明、労働者名簿など6〜2週前
6 申請と事後3電子申請の入力と確認、交付決定前の発注禁止の確認、実績報告・事業化状況報告の担当2週前〜
締切12週前からの準備スケジュールの例 12週前8週前4週前締切 1 制度の選定 2 GビズID・登録 3 事業計画の作成 4 賃上げ・要件の確認 5 見積と書類 6 申請
締切から逆算した準備の流れ(12週間の例)。GビズIDと賃上げ計画の確認が遅れやすい。

主な項目の確認内容と記入例

30項目のうち、AI投資で特につまずきやすい項目を抜き出して示します。

No.項目確認することつまずきやすい点
1-2対象経費が制度に合うかカメラ・PC・ソフト・開発費・クラウド利用料・研修費のどれが対象かクラウドの利用料は補助事業期間分のみ対象のことが多い。受託開発費が対象外の制度がある
1-4併用の可否同じ経費で国と自治体の補助金を重ねられるか自治体の上乗せ補助は、国の補助金の採択を条件にするものがある
2-1電子申請用アカウント公募要領が指定する電子申請のアカウント(GビズIDプライム等)を取得済みか担当者の退職などで使えなくなっていることがある。制度を決める前に確認する
3-3効果の数値付加価値額、労働生産性、省力化率などを算定式で示せるかAIの効果を「精度」で書いてしまい、制度が求める指標と合わない
4-3未達時の返還額賃上げ要件を達成できなかった場合に返還する額を試算したか補助上限の引き上げ特例を使うと、未達時の返還額も大きくなる
5-2見積の内訳AIの開発費・ライセンス・機器が分けて記載されているか一式見積では対象経費の判定ができず、差し戻しになる
6-2交付決定前の発注禁止交付決定前に発注・契約・支払いをしていないかPoCを先に始めてしまい、その費用が対象外になる

記入例として、従業員60名の部品メーカーが省力化投資補助金(一般型)で外観検査AIを導入する場合の一部を示します(架空の例です)。

No.項目担当期限状態メモ
1-2対象経費の確認経理8/1完了カメラ・照明・推論PC・ソフト・システム構築費が対象。PoC費用は交付決定前のため対象外
2-1電子申請用アカウント総務8/8完了取得済み(2024年)
3-3効果の数値生産技術9/5作業中検査工程の作業時間を年3,840時間→1,200時間に。算定根拠はPoCの実測
4-1給与支給総額の現状人事8/22完了直近決算期の値を確認
4-3未達時の返還額経理9/12未着手最低賃金引上げ特例を使う場合の返還額を試算する
5-1相見積購買9/19作業中2社に同じ仕様で依頼。内訳を分けるよう指定

日程表の使い方

チェックリストの2枚目は、締切日を入れると各項目の期限が自動で入る日程表です。2026年10月時点で中小機構の補助金活用ナビに掲載されていた受付期間は、たとえば省力化投資補助金(一般型)第8回が9月18日〜10月16日、中小企業成長加速化補助金第3回が9月29日〜11月12日でした。次回の公募日程が発表される前から、前回の締切を仮置きして準備を始めると間に合いやすくなります。年間の公募日程は2026年度のAI関連補助金スケジュールでまとめています。

よくある質問

申請はベンダーや専門家に任せてもよいですか?

書類作成の支援を受けることはできますが、事業計画の中身(課題、効果、賃上げ計画)は自社で決める必要があります。デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者と共同で申請する仕組みです。公式サイトは不正受給への注意喚起を繰り返し出しており、成功報酬だけを強調する代行業者には注意が必要です。

不採択だった場合、同じ計画で再申請できますか?

多くの制度で再申請は可能です。不採択の理由が開示されない制度もあるため、効果の算定根拠や実施体制など、審査で見られやすい箇所を補強して出し直します。次回の公募で要件が変わっていないかも確認します。

AI研修の費用はどの制度を使いますか?

社員のAI研修費は、設備投資向けの補助金ではなく、厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コースなど)の対象になります。設備の補助金と研修の助成金は所管が違うため、チェックリストでは別の行で管理します。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。