生成設計は「条件から形を探す」設計手法
生成設計(ジェネレーティブデザイン)は、設計者が形状を描く代わりに、荷重、拘束、取付位置、避けるべき空間、材料、製造方法といった条件を与え、条件を満たす形状の候補をソフトウェアに多数生成させる手法です。中身はトポロジー最適化(材料をどこに置けば最も効率よく荷重を支えられるかを計算する手法)を発展させたもので、近年は複数の候補を並列に生成し、重さ・強度・コストで比べられるようになっています。
設計者の役割は、形を描くことから、条件を正しく定義し、候補の中から選ぶことに変わります。条件の定義が甘いと、計算上は軽くて強くても、組み付けられない、作れない形状が出てきます。
代表的な事例の数字と前提
公表されている代表的な事例は次のとおりです。
GMとAutodeskのシートブラケットは、従来品より40%軽く20%強く、8つの部品を1つに統合したとAutodeskの顧客事例で紹介されています。Airbusは2016年、A320の客室仕切り「バイオニック・パーティション」を従来設計より45%(30kg)軽くし、客室全体と当時のA320受注残に適用するとCO₂を年間最大46.5万トン減らせると試算しました。同じ発表では、チタン製のキャビンブラケットが従来の削り出し品より約30%軽くなったとしています。
これらの事例に共通する前提は、金属3Dプリンタなどの積層造形(AM)で作ることです。生成設計が出す有機的な形状、内部の空洞、部品の一体化は、AMだからこそ作れるものです。
切削・鋳造の制約下では効果が縮む
量産部品の多くは、切削、鋳造、プレス、射出成形で作られます。これらの製法には、工具が届く方向、抜き勾配、最小肉厚、型の分割面といった制約があります。生成設計のソフトウェアの多くは製造方法の制約を条件として与えられますが、制約を厳しくするほど、生成できる形状の自由度は下がり、軽量化の幅も小さくなります。
また、AMで作る場合でも、量産のコストが合うかは別の問題です。航空機のように1kgの軽量化が運航燃料に大きく効く製品や、少量生産で型代を省ける部品ではAMの価値が出ますが、大量生産の自動車部品では、AMの1個あたりの製造コストが従来製法を上回ることが多くあります。GMの事例も、量産化の範囲は事例ページからは読み取れません。
生成設計が向く部品の判断基準
次の条件に多く当てはまる部品ほど、生成設計の効果が出やすくなります。
| 判断基準 | 向いている | 向いていない |
|---|---|---|
| 軽量化の価値 | 航空、EV、ロボットの可動部など重さが性能に直結 | 据え置き設備の構造部材 |
| 生産数量 | 少量・多品種、試作 | 大量生産で型が償却済み |
| 製造方法 | AMを採用できる、または鋳造で形状自由度がある | 板金プレス、単純な切削 |
| 部品統合の余地 | 複数部品を溶接・締結して組んでいる | 単一部品で完結 |
| 荷重条件の明確さ | 荷重・拘束が解析で定義できる | 衝撃や疲労の条件が不明確 |
部品統合の効果は見落とされがちです。8部品を1部品にすれば、部品点数、組立工数、品目マスタの管理、調達先の数が減ります。軽量化よりも、こちらの効果のほうが製造現場には大きいことがあります。部品統合の効果を見積もるには、BOM(部品表)とMESの組立工数の実績を参照し、統合で消える工程の時間を数えます。
設計プロセスへの組み込み方
生成設計を一部の担当者の試みで終わらせないためには、設計プロセスのどこで使うかを決めておく必要があります。多くの場合、構想設計の段階で形状の方向性を探るために使い、詳細設計では従来どおり設計者が形状を仕上げる形が現実的です。生成した候補と選んだ理由、条件の設定値をPLMに設計案の一部として残しておけば、後で同じ部品を改良するときに条件から再生成でき、設計の根拠も説明できます。
よくある質問
生成設計とトポロジー最適化は何が違うのですか
トポロジー最適化は1つの条件から1つの最適形状を求める手法で、生成設計はそれを発展させ、複数の条件・材料・製造方法で多数の候補を生成して比べられるようにしたものです。実務上は、生成設計ソフトの中でトポロジー最適化が使われていると考えて差し支えありません。
生成された形状はそのまま使えますか
多くの場合、そのままでは使えません。表面の滑らかさ、取付面の精度、検査のしやすさなどを設計者が手直しし、最終的にはCAEで強度を確認します。生成設計は「形状のたたき台を出す」道具と考えてください。
生成AIで形状を作るのと同じですか
画像や文章を作る生成AIとは仕組みが異なります。生成設計は物理的な条件(荷重・拘束)を満たす形状を最適化計算で求めるもので、出てくる形状は強度の根拠を持っています。
