誰が、いつ出したか

2026年1月7日、工业和信息化部(工信部)など8部門が「"人工智能+制造"专项行动实施意见」(「AI+製造」専項行動の実施意見)を印発しました。8部門の内訳は、工信部、中央网信办、国家发展改革委、教育部、商务部、国务院国资委、市场监管总局、国家数据局です。2025年8月の国务院「人工智能+」行動意見を製造業向けに具体化した文書です(上位文書は「人工智能+」行動意見の解説を参照)。

2027年の目標(原文)

原文PDFに書かれた2027年の目標は次の5点です。

製造業で深度応用する通用大模型
3〜5個
AI+製造 実施意見 原文(2026年1月7日)
工業分野の高品質データセット
100個
同上
普及させる典型応用シーン
500個
同上
選定する标杆(模範)企業
1000社
同上

5点目は、生態主導型の企業を2〜3社と、専精特新(専門化・精緻化・特色化・新規性を持つ中小企業)の中小企業群を育成することです。通用大模型の深度応用とあわせて、業界ごとに特色を持ち全分野をカバーする行业大模型を形成するとしています。

7分野21措置の構成

専項行動は7分野・21の措置で構成されます。7分野の名称は原文どおりです。原文や解説に出てくる主な措置を、当サイトの判断で各分野に割り振ると次のようになります(措置と分野の対応は原文の章立てと完全には一致しない可能性があります)。

分野主な内容
创新筑基(イノベーションの基盤)算力:高性能の学習用チップ、端末の推論チップ、AIサーバー、高速インターコネクト、智算クラウドOSの突破。工業向けの小モデルと大小モデルの協同
赋智升级(智能化による高度化)重点業界への適用、「模数共振」によるモデルとデータの循環
产品突破(製品の突破)智能終端・智能装備。人形ロボットの中試基地・訓練場・模範ラインの整備
主体培育(企業の育成)生態主導型企業、専精特新中小企業、標杆企業の選定
生态壮大(エコシステムの拡大)製造業の高品質データセット建設指針、企業の首席数据官(CDO)制度
安全护航(安全の確保)智能体の分類分級管理、工業モデルのアルゴリズム保護、学習データ保護、敵対的サンプル検知
国际合作(国際協力)国際的な連携

重点業種は、原材料、装備製造、消費財、電子情報、ソフトウェア・情報技術サービスの5つです。専門家チームを企業に派遣する「深度行」も実施します。付属文書として「人工智能赋能制造业重点行业转型指引」と、モデルの選定・チューニング・デプロイ・性能検証の方法を示した「制造业企业人工智能应用指南」の2本が添えられています。

推進体制では、地方政府に対し、中小企業向けの「算力券」「模型券」(計算資源とモデル利用のバウチャー)でコストを下げるよう奨励しています。産業の「内卷式」競争(過当な価格競争)の防止と、国家人工智能产业投资基金の活用も明記されました。深圳市と重慶市は、資金補助・算力・シーンの開放といった支援策をすでに出しています。

日本語圏で紹介されていない4つの論点

工業小モデル、模数共振、首席数据官制度、智能体の分類分級管理の4つの論点を並べた図 工業小モデル細分化したシーン向けの小モデル大小モデルの協同LLM偏重ではない 模数共振以模引数:モデルでデータを集める用数赋模:データでモデルを強化双方向の循環 首席数据官企業のCDO制度の確立を推進データセット建設指針の発布データを組織で持つ 智能体管理分類分級管理注册・身份认证接入管理将来の規制の芽
専項行動のうち、日本の製造業の実務に関係の深い4つの論点。

1つ目は工業小モデルです。原文は「打造面向工业细分场景小模型,鼓励大小模型协同创新」としており、細分化した工業シーン向けの小モデルを明示的に政策の対象にしました。中国の製造業AIの主役はLLMのチャットではなく、判別や時系列の小モデルだという認識が政策に表れています(工業小モデルを明記した理由)。

2つ目は「模数共振」です。モデルを現場に入れることでデータを集め(以模引数)、集めたデータでモデルを強化する(用数赋模)という双方向の循環を政策の言葉にしたものです。

3つ目はデータの組織体制で、製造業の高品質データセット建設指針の発布と、企業の首席数据官制度の確立を推進するとしています。

4つ目はエージェントの管理です。「智能体分类分级管理体系」を構築し、エージェントの注册(登録)・身份认证(ID認証)・接入管理の仕組みも検討するとしています。工場のエージェントが将来、登録や認証の対象になる可能性があります(智能体の分類分級管理)。

よくある質問

外資の工場も「標杆企業1000社」の対象になりますか?

原文の範囲では、外資を除外する記述は確認できていません。ただし選定の手続きと要件は今後の実施細則で具体化されるため、拠点のある地方の工業・情報化部門の通知を確認する必要があります。

「通用大模型3〜5個」とは特定のモデルを指しますか?

原文は具体的なモデル名を挙げていません。製造業で深く応用される汎用の大規模モデルを3〜5個に絞って育てるという意味で、国内の大手(华为の盘古、阿里の通义千问など)が候補と見られますが、これは推測です。

算力券・模型券は日系の中小企業も使えますか?

算力券・模型券は地方政府が中小企業向けに配る制度で、要件は地方ごとに異なります。日系の中小サプライヤーが対象になるかは、所在地の制度を個別に確認する必要があります。

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。