3社とも「既存の分析基盤+生成AI」の構成
Honeywell、ABB、GE Vernovaの3社は、いずれもプロセス産業向けの分析・監視ソフトをすでに持っており、そこに生成AIを足す形でAI製品を出しています。ゼロからAI製品を作ったのではなく、DCS(分散制御システム)やヒストリアンのデータに近い位置にある既存製品を入り口にしている点が共通しています。
| 項目 | Honeywell | ABB | GE Vernova |
|---|---|---|---|
| 基盤製品 | Honeywell Forge Production Intelligence | ABB Ability Genix | Proficy CSense |
| 生成AI機能 | Intelligent Assistant(2025年2月発表) | Genix Copilot(2023年7月にAzure OpenAI統合を発表)、Genix APM Copilot | 分析・予測・最適化の一体化(2025年版) |
| 主な使い方 | KPIの乖離要因、資産の関係を自然言語で分析 | 資産性能管理、エネルギー最適化、トラブルシュート | 分析・監視・予測・シミュレーション・最適化 |
| 提供形態 | 公表資料で確認できず | Microsoft Azure上 | クラウド/オンプレ |
| 関連製品 | Experion Operations Assistant、Field Process Knowledge System | ABB Robotics×LandingAI(別系統) | Proficyシリーズ |
Honeywellは2025年2月11日、Forge Production Intelligenceに生成AIの「Intelligent Assistant」を追加しました。KPIが目標から外れた要因や、資産間の関係を自然言語で問い合わせて可視化・分析する機能です。同社はAI製品群としてExperion Operations Assistant、Field Process Knowledge Systemも挙げています。
GE VernovaのProficy CSense 2025は、分析・監視・予測・シミュレーション・最適化を一体化したAI/ML産業分析として、クラウドとオンプレの両方で提供されています。3社のうち、オンプレ提供を明示しているのはGE Vernovaです。
ABBの数字は3段階ある
効果数値を最も多く出しているのはABBです。ただし、発表時期によって数字の性格が違います。
1つ目は2023年7月3日、ABBがAzure OpenAI ServiceをGenixに統合してGenix Copilotを開発すると発表したときの数字です。資産寿命を最大20%延ばし、計画外停止を最大60%減らすことを「見込む」としていました。製品が出る前の目標値です。
2つ目は2025年5月4日の「Genix APM Copilot」の紹介で、既存のGenix利用者でO&M(運転・保守)コスト最大40%削減、生産効率最大30%向上としています。こちらは利用実績に基づくとされますが、ABBの自己申告で、対象顧客数や期間は示されていません。
3つ目は2025年11月17日にMicrosoftが公開したABBの顧客事例で、セメントなどの重要プロセスのエネルギー最適化で15〜18%、トラブルシュート時間60〜80%削減、重要資産の信頼性最大15%向上が挙げられています。最も具体的ですが、これもABBとMicrosoftという提供側の発信です。
「最大◯%」を社内資料で使うときの読み方
プロセス産業のAIは、プラントの規模、原料の変動幅、既存の制御の成熟度で効果が大きく変わります。セメントのキルンでエネルギーが15%改善した事例が、化学のバッチプロセスに当てはまる保証はありません。
ベンダー数値を社内の稟議や比較表に載せるときは、次の4点を必ず添えます。
- 誰の発表か(ベンダー本体、クラウド事業者の顧客事例、第三者)
- 見込みか実績か(製品発表時の目標、利用者の実績)
- 対象プロセスと期間(セメント、石油、化学のどれか。何か月の比較か)
- 比較対象(AI導入前の自社実績か、業界平均か)
この4点がそろわない数字は、比較表では「参考値」の列に分けて置くのが安全です。同じ考え方を他社製品にも当てはめた解説はベンダー発表の「最大◯%」の読み方にまとめています。
データ基盤側から見た3社の違い
3社の製品はいずれも、DCSやヒストリアンの時系列データを前提にしています。違いが出るのは、そのデータをどこに置くかです。
ABBのGenix CopilotはMicrosoft Azure上で動く設計で、データをクラウドに上げることが前提になります。GE VernovaのProficy CSenseはオンプレでも動くため、プラントのデータを外に出さない方針の企業でも検討しやすい構成です。Honeywellについては、公表資料からは提供形態を確認できなかったため、個別に確認が必要です。
もう一つの違いは、ラボ分析値やバッチ記録との結びつけです。プロセス産業の品質AIは、連続データ(温度・圧力・流量)と、数時間おきのラボ分析値や、MES・LIMSのバッチ記録をつなげて初めて品質予測ができます。製品の比較では、AIの機能よりも先に、この結合を誰がどこで行うかを確認してください。化学プラントでの使い方は化学メーカーのAI活用で扱っています。
よくある質問
Genix CopilotのLLMはどこで動いていますか
ABBの2023年7月の発表では、Microsoft Azure OpenAI ServiceをGenixに統合するとしています。Azureのリージョン選択やデータの取り扱いは、契約時に個別に確認してください。
3社のどれがプロセス産業に向いていますか
既存の制御システムや分析ソフトとの親和性で決まる部分が大きいため、一概には言えません。すでに使っているDCS・ヒストリアンのベンダーの製品は接続の手間が少ない一方、他社製の設備が混在する工場では、データ統合の手間を別に見積もる必要があります。
効果数値が自己申告ばかりなのはなぜですか
プロセス産業の顧客は運転データや改善率を競争上の情報として公開しないことが多く、第三者が検証した数字はほとんど出てきません。そのため、ベンダーの数字は参考にとどめ、自社データでの評価を重視するのが現実的です。
- Honeywell unveils innovative AI assistant(Honeywell, 2025-02-11)
- ABB and Microsoft collaborate to bring generative AI to industrial applications(ABB, 2023-07-03)
- Generative AI in asset performance: ABB Genix APM Copilot(ABB, 2025-05-04)
- ABB Schweiz AG customer story(Microsoft, 2025-11-17)
- See what's new: Proficy 2025(GE Vernova, 2025)
