受注額は3つの時点で別の数字が出ている

优必选のWalker系列について、2025年の受注額は報道の時点ごとに異なる数字が出ています。どれも同社の累計額で、矛盾ではなく時点の差です。

時点受注額(累計)内容出典
2025年9月約4億元国内大手企業1社との2.5億元契約を含む。同社は人形ロボットで世界最大の単一契約としている深圳新闻网(2025年9月4日)
2025年10月6.3億元超広西の具身データ収集センター向け1.26億元を含むTechNode(2025年10月20日)
2025年11月8億元超Walker S2の量産・出荷開始と同時に発表。2025年中に500台納入同社発表(2025年11月17日)

海外メディアのAI Businessは、2025年の受注として9月の2.5億元案件に加え、自貢のデータ収集センター向け1.59億元案件を挙げています(2025年11月18日)。広西の1.26億元と自貢の1.59億元は別の案件として報じられています。

ここで注意したいのは、受注の一部が「具身データ収集センター」向けである点です。これは工場の生産ラインにロボットを入れる案件ではなく、ロボットに作業を学習させるためのデータを集める施設です。工場の実需としてカウントできるのは、受注額の一部にとどまります。

顧客は自動車メーカーが中心

同社が2025年11月の発表で挙げた顧客・協業先は、比亚迪(BYD)、东风柳汽、吉利、一汽-大众青岛、奥迪一汽、北汽新能源、富士康(Foxconn)、顺丰(SF Express)です。8社のうち6社が自動車関連で、残りは電子機器受託製造と物流です。

それ以前のWalker S1の段階では、比亚迪と蔚来(NIO)の生産工程(組立・品質管理)に組み込み、人と並行作業させた実績があると報じられています。2024年に自動車会社だけで約500台のWalker S1受注を得たとの報道もあります(heise online、2025年)。富士康とは鄭州工場への適用を視野にした訓練プロジェクトを行っています。

自動車工場が選ばれる理由として、工信部の「人形机器人创新发展指导意见」(2023年10月)が重点応用に3C(コンピュータ・通信・家電)と自動車の模範ラインを挙げていることが考えられます。政策が示した応用先に沿って顧客を開拓していると読めます(推測)。

Walker系列の2025年受注(累計)
8億元超
优必选発表(2025年11月17日)
2025年中の納入台数
500台
同社発表(2025年11月17日)
2027年の年産能力計画
1万台
同社発表。2026年は5000台

自律バッテリー交換が工場向けの差別化点

Walker S2の技術面で同社が前面に出しているのは、バッテリーを自分で交換して7×24時間稼働できる点です(深圳新闻网、2025年9月4日)。自律バッテリー交換は2025年初に公開されています。

工場の視点で見ると、これは稼働率の問題に直結します。充電のたびに人が介在するなら、ロボット1台の稼働時間は実質的に短くなり、夜間や休日の無人運転にも使えません。同じ考え方は智元の精灵G2(バッテリー2本のホットスワップ)やHexagonのAEON(バッテリー交換式)にも見られ、工場向け人形ロボットの共通要件になりつつあります。

受注から稼働までの段階 受注額8億元超(累計) 工場向けに限定データ収集施設を除く 納入台数2025年中に500台 量産ライン稼働台数・時間は非公表 ››› 右へ進むほど公開情報が少なくなる
受注額から工場の実需を読み分ける流れ。受注・納入・稼働は別の数字として扱う。

公開されていない数字

一方で、工場での導入を評価するのに必要な数字は、2026年10月時点でほとんど公開されていません。

  • 顧客ごとの稼働台数と、量産ラインで常時使われている台数
  • 1台あたりの作業内容(搬送・部品の仕分け・検査など)とサイクルタイム
  • 人の作業と比べたコスト、故障率、保守体制

米国のFigure AIは、BMWスパータンバーグ工場でのFigure 02について、11カ月の稼働、部品9万個超の投入、サイクル84秒、故障箇所まで公表しました。优必选は受注額と量産計画は詳しく出していますが、工場ごとの稼働データは同等の粒度では出していません。欧米勢との比較はBMW×Figureの11カ月の検証が参考になります。

日系工場が見ておくべき点

中国の自動車工場で人形ロボットの導入が進むと、日系の部品サプライヤーにも、顧客の工場で人形ロボットと並んで作業する場面や、納入部品の荷姿をロボットが扱いやすい形に変えるよう求められる場面が出てくる可能性があります(推測)。

人形ロボットを自社で入れるかどうかは、受注額の大きさではなく、自社の工程で専用ロボットやAMRと比べて何が有利かで判断すべきです。判断の軸はヒューマノイドか専用ロボットかで整理しています。製品としてのWalker S2の仕様はUBTech Walker S2の量産開始を参照してください。

よくある質問

Walker S2の受注8億元は、すべて工場向けですか?

すべてではありません。広西の具身データ収集センター向け1.26億元など、ロボットの学習データを集める施設向けの案件が含まれます。工場の生産ラインに入る台数は、受注額から単純には計算できません。

日本の工場でWalker S2を導入できますか?

2026年10月時点で、日本での提供状況は当サイトの調査では確認できていません。海外で導入を検討する場合も、保守体制、安全規格への適合、データの扱いを個別に確認する必要があります。

自律バッテリー交換はなぜ重要なのですか?

充電のたびに人が作業を止めて介在すると、24時間稼働や無人時間帯の運転ができず、ロボット1台あたりの実稼働時間が短くなるためです。工場向け人形ロボットでは、連続稼働の条件として重視されています。

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。