3類型:データの取り方と業務の範囲で分かれる

予知保全の製品は、「異常の兆候をどのデータから見つけるか」と「見つけた後の保全業務をどこまで扱うか」で3つに分かれます。

  1. センサー一体型:自社のセンサーや機器の信号で設備状態を監視する
  2. APM・分析型:既存の設備データ(ヒストリアン、IoT基盤)を集めて分析する。APMは資産性能管理(Asset Performance Management)
  3. CMMS型:保全作業の記録・計画・部品管理(CMMS)を中心に、AIで故障対応を支援する

9製品の比較

製品類型データの取り方特徴規模・顧客(自社申告)
Auguryセンサー一体型自社センサー予知保全監視と役割別AIエージェントの「Industrial AI Workforce」170社超、Fortune 500の20社超
Rockwell FactoryTalk Analytics GuardianAIセンサー一体型(ドライブ活用)VFDの電気信号軸ミスアライメント、アンバランス、軸受け故障等を早期警告。ノーコードでエッジ稼働2024年7月に日本で一般提供
Siemens SenseyeAPM・分析型既存の設備データMaintenance Copilot付き。旧senseye.ioはSiemens製品ページに統合BlueScope Steel、Sachsenmilch等
TwinThreadAPM・分析型既存データ(クラウド)産業AIとデジタルツインで運用改善。AVEVAによる買収が保留中公表資料で規模の記載なし
UptakeAPM・分析型フリートのデータバス、建設、トラック、鉱業、連邦・防衛のフリートに重心製造業より移動体中心
AvathonAPM・分析型既存データ航空宇宙・エネルギー・製造の物理オペレーションを自律化公表資料で規模の記載なし
C3 AI ReliabilityAPM・分析型既存データエンタープライズAIアプリの一つとして提供公表資料で製造業の規模記載なし
MaintainXCMMS型保全記録+設備データAIによるトラブルシュート・異常検知・部品予測1.4万社超
AquantCMMS・サービス型サービス知識音声・カメラ・チャットで設備のトラブルシュートを支援する会話型AI公表資料で規模の記載なし

Senseyeは英国発のスタートアップでしたが、現在は旧ドメインがSiemensの製品ページにリダイレクトされ、完全にSiemensの予知保全製品として扱われています。Siemensは2025年3月、SenseyeにEntry PackageとScale Package(Maintenance Copilotの全機能)を追加し、パイロットで事後保全の時間が平均25%減ったと発表しました。

Auguryは2011年創業で、2019年にAlluviumを買収しています。

予知保全AIの3類型とデータの位置 センサー一体型振動・電流・電気信号AuguryGuardianAI APM・分析型ヒストリアン・IoT基盤Senseye・TwinThreadUptake・Avathon・C3 AI CMMS型保全記録・作業指示MaintainXAquant 設備の状態保全の業務
予知保全AIの3類型。左ほど設備に近いデータ、右ほど保全業務の記録に重心がある。

効果数値はベンダー申告として読む

各社のサイトには顧客の成果が載っていますが、ほぼすべてがベンダーの掲載値です。

MTTR(平均修復時間)の短縮
70%
MaintainX掲載のMichaels事例(ベンダー申告、2026年閲覧)
保全コストの削減
53%
MaintainX掲載のRedimix事例(ベンダー申告、2026年閲覧)
事後保全時間の削減
平均25%
Siemens Senseye Maintenance Copilotのパイロット(Siemens発表、2025年3月)

Auguryの顧客ページでは、DuPontの担当者が「これまでの導入で予測精度100%」と発言していますが、対象設備の数や期間は示されていません。PepsiCo Labs、Colgate-Palmolive、Barilla、Nestlé-Osemなどの事例ページには数値が載っていません。

MaintainXの事例はCMMS導入による改善を含んでおり、AI機能の効果と、紙やExcelの保全記録をシステム化した効果が分けられていない点にも注意が必要です。数値の読み方はベンダー発表の「最大◯%」の読み方でも扱っています。

自社に合う類型の選び方

類型の選択は、保全部門がいま何に困っているかで決まります。

  • 回転機の突発故障が多く、設備データがほとんど取れていない:センサー一体型。後付けで始められる
  • ヒストリアンやIoT基盤に設備データがすでにあり、活用できていない:APM・分析型
  • 保全記録が紙やExcelで、故障履歴が教師データとして使えない:CMMS型を先に入れる

予知保全AIの精度は、故障履歴が整理されているかで大きく変わります。CMMSに「いつ・どの設備の・どの部位が・どう壊れ・どう直したか」が残っていなければ、どの型のAIも学習と評価ができません。保全記録の整え方は保全記録(CMMS)を予知保全AIの教師データにする、製品比較の軸は予知保全AI製品の比較を参照してください。

よくある質問

欧米製品と国内製品のどちらがよいですか

対象設備と保全体制で決まります。欧米製品は回転機やプロセス設備の大規模フリートで実績を積んでいるものが多く、国内製品は日本の設備メーカーや保全慣行に合わせた機能を持つことがあります。日本での保守体制と、既存設備との接続を先に確認してください。

センサー一体型とAPM型を組み合わせることはできますか

可能です。重要な回転機にはセンサー一体型を入れ、その他の設備は既存データでAPM型を使い、結果をCMMSに集約する構成は珍しくありません。その場合、設備IDをすべての製品で統一することが前提になります。

Rockwell GuardianAIはドライブ以外の設備にも使えますか

GuardianAIはPowerFlex 755/755T/6000Tなどの可変周波数ドライブ(VFD)の電気信号から異常を検知する製品で、対象はこれらのドライブで駆動されるモーターと負荷機械です。それ以外の設備には別の手段が必要です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。