食品工場の3つの条件がAIの選び方を決める

食品工場の課題は、工業製品の工場と次の点で異なります。

条件現場で起きていることAIへの影響
原料のばらつき野菜・肉・穀物の形や色が毎回違う不良の定義が難しく、良品学習が向く
人手不足原料選別・盛り付け・箱詰めに人手が集中検査と搬送の省人化の効果が大きい
短い賞味期限作りすぎは廃棄、欠品は機会損失需要予測の精度が利益に直結する

この3つに対応する形で、原料検査、需要予測、省人化の3領域が先行し、記録のデジタル化とサプライチェーン分析が続いています。

5つの用途と事例

用途内容公開事例
1. 原料検査原料の不良品・異物を画像で除去キユーピー(AI原料検査装置)
2. 需要予測と生産計画日別・品目別の需要を予測し作りすぎと欠品を減らす海天味业(受注リードタイム38.7%減)
3. 品質・歩留まりの分析原料ロスと不良の要因分析海天味业(原料ロス33.6%減、不良率39.1%減)
4. 作業記録と教育日報・手順書のデジタル化、新人教育雪印メグミルク(教育時間約50%減)
5. サプライチェーンの照会生産・在庫・物流データへの自然言語での照会伊利(照会が約2週間から即時に)

原料検査:キユーピーが良品学習を選んだ理由

キユーピーのAI原料検査装置は、不良品のパターンではなく良品のパターンを学習し、良品以外を不良とする方式で精度を大きく上げたとされます(MONOist、2020年4月)。原料の不良は種類が多く、すべてを集めて学習させるのは現実的でないためです。2016年に開発を始め、2018年8月に鳥栖工場(ベビーフード原料)に導入し、統合報告書の時点では国内4工場で稼働しています。扱う原料は3,000種類以上で、目標価格は従来の検査装置の10分の1としていました。

ブレインパッドとGoogleとの取り組みでは、アルゴリズムの検討から約2か月でプロトタイプが完成し、生産性は2倍になったと報告されています(実験段階の成果、Google Cloudブログ)。

キユーピーのAI原料検査装置が扱う原料
3,000種類以上
MONOist(2020年4月)
海天味业(佛山)の原料ロス削減(不良率は39.1%減)
33.6%
WEF Global Lighthouse Network(2025年1月)
雪印メグミルクのデジタル日報導入による教育時間削減
約50%
MONOist(2026年9月)

需要予測と品質:海天味业のライトハウス工場

WEFの2025年1月の発表では、調味料大手の海天味业(佛山)がライトハウスに選ばれ、50超のユースケースの約半分がAIで、原料ロスを33.6%、不良率を39.1%、受注リードタイムを38.7%減らしたとされています。需要予測から生産、品質までを通して管理していることがうかがえます。

中国の乳業大手の伊利は、阿里云の通义千问を基盤にBIエージェントを作り、以前は約2週間かかったサプライチェーンのデータ照会を自然言語ですぐ返せるようにしたと報じられています(経済日報・新華網、2025年9月)。

需要予測の進め方は製造業の需要予測AIとはで解説しています。食品では、出荷実績を需要とみなすと欠品期間の需要を見落とすため、受注や店頭の販売データを使えるかが精度を左右します。

省人化と記録:雪印メグミルクのデジタル日報

雪印メグミルクは、自社工場で約2年かけて改善したデジタル日報「Totonoworks」で教育時間を約50%減らし、2026年9月に外販を始めました(MONOist)。作業手順と記録を一体にしたツールで、AIの前段にあるデータの取り方を整えた例です。ユーザー企業が自社のツールを外販する動きとしても注目されます。

よくある質問

天然原料のばらつきがあってもAI検査はできますか

良品学習型の異常検知なら、良品のばらつきを学習させることで対応できます。ただし季節や産地で原料の見た目が変わるため、時期をまたいだ良品画像を集め、定期的に再学習する運用が必要です。

食品工場の需要予測AIはどの粒度で予測すべきですか

生産計画に使うなら、品目別・日別が基本です。賞味期限が短い品目ほど細かい粒度が必要になります。予測値だけでなく予測の幅(区間)を出し、安全在庫の設定に使うと計画に組み込みやすくなります。

中小の食品工場でも始められますか

始められます。デジタル日報や検査記録のデジタル化から始めれば、大きな投資は要りません。和菓子の青柳総本家が工場DXを1カ月で立ち上げた例のように、小さな業務のデジタル化から広げる進め方もあります。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。