鋳巣は「条件で予測」と「検査で発見」の両面から

鋳造・ダイカストの不良の代表は鋳巣(ポロシティ)です。溶けた金属が固まるときの収縮や、巻き込んだガスが内部に空洞として残るもので、外観からは見えません。強度不足や、加工後の表面に穴が出る、気密部品で漏れが起きるといった問題につながります。

鋳巣の出方は、製品の形状(肉厚の変化が大きい場所)、金型の温度分布、溶湯の状態、射出の速度切替のタイミングなど、多くの要因が重なって決まります。熟練者は経験でこれらを調整してきましたが、要因が多いため、条件と結果の関係をデータで見ることの効果が大きい工程です。

対策は2つの方向があります。

方向方法強み限界
条件から予測ショットごとの鋳造条件から鋳巣の出やすさを予測出荷前・加工前に疑わしい品を分けられる条件と検査結果を紐付けたデータが要る
検査で発見X線透過検査の画像をAIで判定実物を直接確認できる全数検査はコストと時間がかかる
外観・判別画像で外観不良や型式を判定導入が容易内部欠陥は分からない

この3つは組み合わせて使います。条件からの予測で疑わしい品を選び、それをX線で重点的に検査する、という流れにすると、全数X線検査をしなくても見逃しを減らせます。

条件からの予測:ショットデータの紐付けが要

ダイカストでは、1ショットごとに射出速度、鋳造圧力、金型温度、溶湯温度、型締め時間などの条件が記録できます。これらの条件と、その鋳造品の検査結果(X線・気密・加工後の外観)を紐付ければ、どの条件のときに鋳巣が出やすいかをAIで学習できます。

壁になるのは紐付けです。ダイカストは1つの金型で複数個を同時に作ることが多く、鋳造品にショット番号やキャビティ番号を刻印しないと、後工程の検査結果がどのショットの条件に対応するか分かりません。品質AIのためのトレーサビリティの設計は品質AIの前提はトレーサビリティで解説しています。

ダイカストのショットデータと検査の紐付け ダイカストマシンショット条件 刻印ショット・キャビティ X線・気密検査加工後外観 機械加工 MES:ショット番号で条件と検査結果を結合→ 鋳巣予測AI → 疑わしい品をX線で重点検査
ダイカストの鋳巣予測の流れ。ショット番号の刻印が条件と検査結果をつなぐ。

X線検査のAI化

X線透過検査の画像から鋳巣を見つける作業は、検査員の熟練と集中力に頼っており、AIによる判定支援の効果が期待できる領域です。ただし、鋳巣が許容されるかどうかは、大きさだけでなく位置(強度に効く場所か、加工面にかかるか)で決まります。AIに「鋳巣があるか」だけを判定させても、合否の判断にはなりません。製品の図面上で、鋳巣を許容しない領域を定義し、その領域での検出を重視する設計にします。

運用面では、AIの判定画像と検査員の最終判定をセットで保存しておくことが重要です。AIが見逃した鋳巣や、AIが指摘したが検査員が合格とした画像は、次の再学習の材料になります。また、X線装置の管電圧や撮影角度を変えると画像の見え方が変わるため、撮像条件の変更は品質の変更管理の対象にし、変更後はAIの判定精度を確認し直します。

X線検査の全数化が難しい工場では、条件からの予測と組み合わせて「どの製品をX線に回すか」を決める使い方が現実的です。予測で鋳巣のリスクが高いと出たショットを優先して検査し、低いショットは抜き取りにすれば、検査能力を変えずに見逃しを減らせます。この場合も、抜き取り側で見逃しが出ていないかを定期的に確認します。

X線を含む非破壊の検査方式の選び方は異物検査AIの選び方でも扱っています。

群馬合金の事例:型式判別と日報廃止

中小のダイカスト工場で成果が出ている例として、中小機構の省力化ナビに掲載された群馬合金(非鉄ダイカスト、125人)があります。同社は、キーエンスのAI画像センサー「IV3」で鋳造品の型式を自動で判別し、異品の取り違えをなくしました。さらに、自社製の生産実績モニタで手書きの日報を廃止しています。

この事例のポイントは2つです。1つは、鋳巣のような難しい欠陥ではなく、判別しやすい型式の確認から始めたことです。似た形の製品が多いダイカスト工場では、取り違えは顧客クレームに直結しますが、画像で判別しやすく、既製のAI画像センサーで開発なしに解決できます。もう1つは、生産実績を自動で集める仕組みを作ったことです。これは将来、ショットデータと検査結果を紐付けて鋳巣予測を行うときの土台になります。

群馬合金の従業員規模
125人
中小機構 省力化ナビ 事例0029
AI画像センサーによる型式判別の効果
取り違え0
同上(異品の取り違えをなくしたと報告)

よくある質問

鋳巣の予測にはどれくらいのデータが必要ですか

鋳巣の発生率と、条件の変動の幅によります。不良率が低い工程では、数か月分の全ショットのデータと、不良品の検査結果が数十件以上ないと、条件との関係を見つけにくくなります。

古いダイカストマシンでもショットデータは取れますか

制御装置からデータを出力できない機種でも、後付けのセンサーで射出圧や金型温度を取る方法があります。取る項目は、鋳巣に効くとされる条件から優先して選びます。

砂型鋳造でも同じ考え方が使えますか

使えますが、砂型鋳造は造型・注湯の条件が多く、1個ごとの条件の記録が難しい工程もあります。まず注湯温度や砂の状態など、ロット単位で取れる条件と不良率の関係から見ていきます。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。