AEONは「計測機器メーカーのヒューマノイド」

Hexagonはスウェーデンに本社を置く計測・センシング技術の企業で、三次元測定機やレーザースキャナー、計測ソフトウェアを手がけています。同社は2025年6月17日、産業用ヒューマノイド「AEON」を発表しました。

発表で示された主な特徴は次のとおりです。

  • NVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティング、Omniverse、Jetsonを搭載
  • バッテリー交換式で、充電待ちなしに連続稼働できる
  • 用途として、ピッキング、マシンテンディング(機械へのワークの出し入れ)、部品検査、リアリティキャプチャ(現実空間の3Dデータ化)を想定
  • SchaefflerとPilatus(スイスの航空機メーカー)でのパイロットを計画

汎用の作業を前面に出す他のヒューマノイドと違い、検査・計測・リアリティキャプチャという、Hexagonの本業と直結する用途を明示している点が特徴です。

技術パートナーの分担

Hexagonの日本語の発表によると、AEONの技術パートナーと役割は次のように分担されています。

パートナー役割
NVIDIA演算基盤(Jetson)とシミュレーション(Omniverse)
MicrosoftAzureによる開発・学習の基盤
maxonアクチュエーター(モーター・駆動系)
Hexagon計測・センシング技術、システム統合
Hexagon AEONの中心にHexagonの計測・センシング技術があり、NVIDIAの演算とシミュレーション、MicrosoftのAzure学習基盤、maxonのアクチュエーターが周囲を支える構成図 Hexagon AEON計測・センシング・統合 NVIDIAJetson・Omniverse MicrosoftAzureで開発・学習 maxonアクチュエーター
AEONの技術分担。Hexagonは計測とセンシングを担い、演算・学習・駆動はパートナーに任せている。

ヒューマノイドの全要素を自社で作るのではなく、自社の強みである計測とセンシングに集中し、演算・学習基盤・駆動系は専門企業に任せる構成です。HexagonはNVIDIA Omniverseのデータ相互運用を自社ソフトウェアに統合する企業の1社でもあり(NVIDIA、2025年3月)、シミュレーション基盤との親和性も高いと考えられます。

パイロットとBMWでの展開

発表時点では、SchaefflerとPilatusでのパイロットが計画され、Hexagonは「今後6カ月で生産現場に導入し、商用展開を拡大する」としていました。その後2026年6月には、BMWがライプツィヒ工場でHexagon AEONによるヒューマノイド展開を拡大したと報じられています。BMWはスパータンバーグ工場ではFigure 03を、ライプツィヒ工場ではAEONを使っており、工場ごとに異なる機体を試している状況です。

なぜ計測・検査にヒューマノイドなのか

検査や計測の自動化は、従来は固定式の三次元測定機、検査セル、ロボットに取り付けたセンサーで行われてきました。それでもヒューマノイドに意味があるとすれば、次の場面と考えられます(推測を含む)。

  1. 測定対象が大きい・動かせない:航空機の機体や大型部品のように、測定機に運べない対象を、人と同じように歩いて回って測る
  2. 工程の間を移動して測る:複数の工程を巡回し、それぞれで抜き取り検査を行う
  3. 現場の3Dデータ化:設備やレイアウトの変更後に、工場の現状をスキャンしてデジタルツインを更新する

3つ目のリアリティキャプチャは、データ基盤の観点で興味深い用途です。工場のデジタルツインは、作った時点から現実とずれていきます。設備の移動、治具の追加、通路の変更が反映されないと、シミュレーションの結果が信頼できなくなります。ヒューマノイドが日常的に工場を巡回してスキャンし、デジタルツインを最新に保つという使い方は、単純な作業の代替とは違う価値です。デジタルツインの前提データについてはOmniverseで工場デジタルツインで扱います。

2点目と3点目は、検査を自動化しても品質記録につながらなければ、品質保証の業務は楽にならないという点です。検査ロボットの構成は検査ロボット×AI、ヒューマノイド全体の実証はヒューマノイドの工場実証一覧にまとめています。

よくある質問

AEONは日本で導入できますか

本記事の調査では、日本での提供条件を一次情報で確認できていません。Hexagonは日本でも計測機器事業を展開しているため、個別の問い合わせが必要です。

AEONは二足歩行ですか

本記事で参照した発表資料からは、移動方式の詳細を確認できていません。導入を検討する場合は、床面や段差などの現場条件と合わせて確認してください。

検査用途ならヒューマノイドより固定式の装置の方が良いのでは

多くの検査では固定式の装置やロボット搭載の検査セルの方が速く、精度も安定します。ヒューマノイドが意味を持つのは、対象が大きく動かせない場合や、複数工程を巡回する場合などに限られると考えられます。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。