4つの類型で見る日本の勢力図

日本の主要プレーヤーは、取り組み方によって4つの類型に分けられます。

日本のフィジカルAIプレーヤーを、既存ロボット+基盤モデル、電機・ITの実装パートナー、物流・搬送の実装、データと基盤モデルの4類型に分けた図 既存ロボット+基盤モデル安川電機・ファナック川崎重工出荷開始・実証が並行 電機・ITの実装パートナー日立・富士通・リコー自社工場で実証・技術開発 物流・搬送の実装Mujin・ラピュタロボティクス導入事例が多い データと基盤モデルTelexistence・Noetra・AIRoAデータ整備・国産モデル開発
日本のフィジカルAIの4類型。既存ロボット+AIと、物流・搬送の実装が先行している。

8社の取り組み一覧

企業類型主な取り組み(公開情報)段階
安川電機既存ロボット+AIMOTOMAN NEXT×Gemini Robotics ER 1.6(2026年7月)、ソフトバンクとVLAで柔軟物ハンドリング開発・実証
ファナック既存ロボット+AIAI溶接エージェント(2026年12月末出荷)、Google・NVIDIA・日立・富士通と提携。フィジカルAI関連で1,000台超出荷出荷開始
川崎重工既存ロボット+AI坂出工場でOmniverse・Isaac・Cosmosを使う「次世代デジタルシップヤード」を開始(2026年7月)。溶接・塗装・検査・搬送のAIロボット開始
日立実装パートナーファナックと茨城地区工場で実証(2026年9月)。フィジカルAI向けガードレール技術を発表(2026年9月)実証・技術発表
リコー実装パートナー作業動画から行動表現を学ぶVLAを開発し、部品のピック&プレースで動作確認(2026年8月)研究開発
Mujin物流・搬送MujinOSでデパレタイズ、ワーク投入、部品供給。SUBARU、トヨタ紡織、アイシン、三五、松田電機工業所などの事例導入
ラピュタロボティクス物流・搬送AMRとASRS。ホンダロジコム(AMR20台)、日本出版販売。ASRSは採用30拠点・稼働10拠点以上(同社発表)導入
Telexistenceデータ・基盤動作データセット生成「Motion Data Factory」(2026年1月正式開始)、セブン-イレブンと人型ロボット「Astra」サービス開始・開発

富士通はファナックとの事業検討、Noetra(国内44社出資、2026年7月本格始動)は国産マルチモーダル基盤モデルの開発で、この勢力図の周辺にいます。

先行しているのは「既存ロボット+AI」と「物流・搬送」

8社を並べると、日本の特徴がはっきりします。ヒューマノイドの量産ではなく、既存の産業ロボットに基盤モデルを組み合わせる路線と、物流・ピッキングの実装が先行しています。

この傾向には理由があります。日本は産業用ロボットの製造で世界有数の地位にあり、稼働台数も多い国です。IFRによると、2024年の日本の産業用ロボット稼働台数は45万500台でした。既存の資産と顧客基盤を活かすなら、新しい機体を作るより、既存のロボットを賢くする方が合理的です。安川電機とソフトバンクの「フィジカルAIを既存ロボットシステムの一機能モジュールに」という設計は、この路線を端的に表しています。

物流・搬送が先行するのは、作業の失敗が品質に直結しにくく、効果を測りやすいためです。Mujinの事例の多くは、デパレタイズ(荷下ろし)、加工ラインへのワーク投入、組立工程への部品供給といった搬送系の作業です。詳しくはMujinOSとはで扱います。

2024年の日本の産業用ロボット稼働台数
45万500台
IFR(2025年9月)
2040年度までのフィジカルAIへの官民投資計画
10.5兆円
成長戦略会議(2026年6月、MONOist報道)
国産マルチモーダル基盤モデルを開発するNoetraへの出資企業数
44社
ITmedia ビジネス(2026年10月)

弱いところ:データと基盤モデル

一方で、ロボット基盤モデルそのものと、学習用の動作データの整備では、米国と中国が先行しています。日本でこの領域を担うのは、Telexistenceの動作データ受託生成、AIロボット協会(AIRoA)のデータセット整備、Noetraの国産基盤モデル開発などです。経済産業省とNEDOは2026年度にマルチモーダル基盤モデル開発のプロジェクト全体へ約3,873億円を支援するとされています(ITmedia ビジネス、2026年10月)。政策の整理は日本のロボット・フィジカルAI政策で扱います。

製造業のユーザーはどこから見るか

どの入り口でも、ロボットへの作業指示と実績の記録をMESや生産管理とつなぐ設計が共通の課題になります。全体の判断基準はフィジカルAI導入の判断基準にまとめています。

よくある質問

日本にヒューマノイドの有力企業はありますか

本記事の8社は、既存ロボット+AI、物流・搬送、データ整備が中心です。Telexistenceはセブン-イレブンと人型ロボットAstraを共同開発しており、2029年の店舗導入を目標としています。NEDOは国産汎用ロボット開発コンペの成果を2026年9月に公開しています。

中小製造業が使えるフィジカルAIはありますか

協働ロボットにAI機能を追加する製品や、溶接・搬送などの特定作業に絞った製品が入り口になります。サブスクリプションで提供されるものもあり、初期投資を抑えて試せる場合があります。

日本は中国や米国に遅れていますか

ヒューマノイドの出荷台数や基盤モデルでは遅れていますが、産業用ロボットの製造と既存ロボットへのAI組み込みでは出荷が始まっています。比べる領域によって評価は変わります。

この記事に出てくる用語

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この特集について

フィジカルAIは工場に来るのか

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  2. 美的の「智能体工厂」:荆州工場の14エージェント・38シーンと人形ロボット
  3. ヒューマノイドの工場実証一覧:BMW・Mercedes・Schaeffler・BYDなど10社の現在地
  4. フィジカルAI導入の判断基準:今やるべき工場・待つべき工場を分ける5つの質問
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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。