5系統の提供状況(2025年5月時点)

Siemens(ドイツ)のIndustrial Copilotは、単一の製品ではなく、同社のソフトウェア製品群それぞれに組み込まれた生成AIアシスタントの総称です。2025年5月12日の同社発表時点で、提供状況は次のとおりでした。

系統対象製品主な機能提供状況(2025年5月)
DesignNX CAD設計作業の支援提供中
Planning計画系製品生産計画の支援プレリリース
EngineeringTIA Portal自然言語からPLCコード(SCL)生成提供中
OperationsInsights Hub工場データの分析・洞察提供中(機械レベル版は2025年末予定)
ServicesSenseye予知保全・保全作業の支援(Maintenance Copilot)提供中

2026年1月のCES 2026では、Teamcenter(PLM)、Polarion(ALM)、Opcenter(MES)を対象とする9種のIndustrial CopilotをSiemens Xcelerator Marketplaceで全規模の企業向けに提供すると発表しました。MESであるOpcenterが対象に入った点は、製造現場のデータに近い領域まで生成AIを広げる動きとして注目できます。

発表の時系列

2024年1月から2026年1月までのSiemens Industrial Copilot関連発表の時系列 2024.1Mendix×Bedrock 2025.1 CESCopilot forOperations 2025.3 HM前SCL生成・保全パッケージ 2025.5 AutomateAIエージェント・マーケットプレイス構想 2026.1 CES9種のCopilotをMarketplaceで
Siemens Industrial Copilotの主な発表。Q&A型のアシスタントからエージェント型へ移っている。
  • 2024年1月:ローコード基盤MendixにAmazon Bedrockを統合し、工場作業者の機械文書検索や歩留まり改善提案に生成AIを使えるようにした
  • 2025年1月6日(CES 2025):工場現場の機械近くで動く「Industrial Copilot for Operations」を発表。エッジ基盤Industrial Edgeとの統合を表明
  • 2025年3月24日(Hannover Messe 2025前):Engineering CopilotのSCL生成が推定約60%高速化と発表。Senseyeに「Entry Package」と「Scale Package(Maintenance Copilot全機能)」を追加
  • 2025年5月12〜13日(Automate 2025):Q&A型を超え、多段の工程を自律実行するAIエージェントをIndustrial Copilotの背後に導入すると発表。オーケストレーター(統括役)が専門エージェント群を動かす構成で、サードパーティ製を含むエージェントのマーケットプレイスをXcelerator上に設ける計画も示した
  • 2026年1月6日(CES 2026):9種のIndustrial CopilotをXcelerator Marketplaceで提供。Meta Ray-Ban AIグラスによる現場作業者向けハンズフリーAIガイダンスも発表

効果の数字は性格が3種類ある

Siemensが示す効果の数字は、性格が異なるものが混在しています。

SCL(PLCコード)生成の高速化
約60%
Siemens推定(2025年3月発表)。実測値ではない
事後保全時間の削減
平均25%
Senseye Maintenance Copilotのパイロット(Siemens、2025年3月発表)
顧客生産性の向上
最大50%
Siemens Digital Industries CEO Rainer Brehmの構想(2025年5月)

1つ目のSCL生成の約60%高速化は、同社の推定値です。2つ目の事後保全時間25%削減は、パイロットでの平均値です。3つ目の「最大50%」は、CEOが示した将来の構想(ビジョン)で、測定に基づく数字ではありません。3つを同じ「効果」として並べると、読み手が実績と見込みを混同します。数字の分類方法はベンダー発表の「最大◯%」の読み方で整理しています。

公開されている導入例

Siemensの発表で名前が出ている導入例は次のとおりです。いずれも定性的な効果の報告が中心です。

  • thyssenkrupp Automation Engineering:Industrial Copilot(PLCコード生成)をグローバル展開し、コード品質向上と開発の高速化を報告
  • Siemensバート・ノイシュタット工場:Insights Hub Production Copilotで分散したデータを洞察に変換
  • Siemensエアランゲン電子工場:24時間の現場トラブルシュートと保全にCopilotチャットボットを利用
  • Schaeffler:2024年に現場でIndustrial Copilotを使い、エンジニアリングと運用の業務を自動化

定量的な効果を公表している例は限られており、自社で導入を検討する場合は、自社のPoCで効果を測る前提で計画します。

MES・データ基盤から見たSiemensの狙い

Industrial Copilotの展開を製品群で見ると、Siemensは設計(NX)からエンジニアリング(TIA Portal)、MES(Opcenter)、保全(Senseye)、PLM(Teamcenter)まで、自社のソフトウェアのデータをつなぐ層に生成AIとエージェントを置こうとしています。2025年5月のエージェント構想とマーケットプレイス計画は、その層を他社製のエージェントにも開放し、Siemensのプラットフォームを中心にエコシステムを作る狙いと読めます。

これは、MESやERPの上に「エージェント層」を誰が持つかという競争の一部です。SAPやMicrosoftも同じ層を狙っています(産業AIエージェントの主戦場)。

よくある質問

Siemens Industrial Copilotは日本で使えますか?

製品ごとに提供状況が異なり、日本での提供範囲や日本語対応は公開資料では確認できない部分があります。導入を検討する場合は、対象製品(TIA Portal、Senseyeなど)ごとにSiemensの国内窓口で確認します。

Industrial Copilotは「AIエージェント」ですか?

2025年5月までの製品は、主に人の質問に答えたり下書きを作ったりするアシスタントでした。Siemensは同月、多段の工程を自律実行するAIエージェントを背後に導入すると発表しており、アシスタントからエージェントへ移行する途中の段階にあります。どこまで自動で実行するかは、製品と機能ごとに確認が必要です。

「生産性最大50%向上」は実績ですか?

実績ではありません。Siemens Digital Industries CEOのRainer Brehmが示した将来の構想です。実績に近い数字としては、Senseye Maintenance Copilotのパイロットで事後保全時間が平均25%削減されたという報告があります。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。