印字検査は「読めるか」と「正しいか」の2段階
印字検査には2つの目的があります。1つは、印字が欠けたりかすれたりせず、読める状態で印字されているかの確認(印字品質の検査)です。もう1つは、印字されている内容が正しいか、つまり今生産している製品のロット番号・賞味期限・品番と一致しているかの確認(内容の照合)です。
前者は外観検査の一種で、文字のかすれ・欠け・にじみを検出します。後者は、OCR(光学文字認識)で文字を読み取り、正しい値と比べる処理です。製品回収につながるのは後者の誤り、たとえば前日の賞味期限のまま印字された、別の品番の版を使った、といったケースで、こちらは文字がきれいに印字されていても起こります。印字検査の自動化では、両方を設計する必要があります。
印字の種類で読取りの難しさが違う
| 印字の種類 | 例 | 読取りの難しさ | 主な課題 |
|---|---|---|---|
| ラベル印刷・熱転写 | 個装ラベル、段ボールの表示 | 比較的容易 | 擦れ・かすれ、ラベルの貼りずれ |
| インクジェット(ドット) | 食品包装の賞味期限、ボトルのロット | 中程度 | ドットの欠け、にじみ、曲面への印字 |
| レーザマーキング | 樹脂・金属部品のロット、2次元コード | 中程度 | 下地とのコントラストが低い |
| 刻印(打刻・鋳出し) | 金属部品の型番、鋳物のキャビティ番号 | 難しい | 色の差がなく凹凸だけで文字を作る |
刻印は文字と下地が同じ色で、凹凸の影だけで文字を読むため、照明の当て方で読取り精度がほぼ決まります。ローアングル照明で影を作るか、3D計測で凹凸を高さとして取るのが一般的です。ドット印字は、ドットの間隔が開くと文字がつながらず、一般的なOCRが文字として認識しにくくなります。ドット印字に対応した読取り機能や、ドットの字形で学習したAIを使います。
読取り精度を上げる3つの工夫
照明と撮像を印字の種類に合わせる
ラベルやインクジェットは拡散照明で反射を抑え、刻印はローアングル照明で影を作ります。曲面のボトルや缶への印字は、文字の端が曲面で歪むため、カメラの位置を印字面に正対させるか、複数の角度から撮ります。搬送中に撮像する場合は、露光中のブレで文字がつぶれないよう、短い露光と十分な光量を確保します。
読み取る字種と書式を限定する
印字される文字の種類と書式は、多くの場合あらかじめ決まっています。賞味期限なら数字と区切り記号、ロット番号なら決まった桁数の英数字です。読取り対象の字種を限定すると、数字の0と英字のO、8とB、1とIのような取り違えを大幅に減らせます。手書き文字のAI-OCRの精度向上策としても、読み取り範囲と字種の限定が挙げられています(PFU デジタラクル、2025年7月)。書式(桁数、日付として成立するか)のチェックを読取り後に加えると、誤読をさらに検出できます。
信頼度の低い読取りは人に回す
OCRは、読み取った文字ごとに信頼度(どれだけ確からしいか)を出せるものが多くあります。信頼度が低い場合や、書式チェックに通らない場合は、自動で良品とせず、排出して人が確認する流れにします。印字の内容の誤りは回収につながるため、迷ったら止める設計が安全側です。
読み取った値は生産実績と照合する
印字検査の本来の目的である誤表示の防止は、読み取った値を「本来あるべき値」と照合して初めて実現します。照合の相手は、生産計画やMESが持つ、今このラインで作っている製品の情報です。
照合する項目は、品番(品番に対応する印字内容か)、ロット番号(現在の製造ロットと一致するか)、賞味期限・使用期限(製造日と品目ごとの期限設定から計算した値と一致するか)です。正しい値を印字機の設定画面に人が手入力する運用では、入力ミスがそのまま印字されます。MESや生産計画から印字機と検査装置の両方に同じ値を送り、検査装置で読取り結果と照合する構成にすると、入力ミスと印字の誤りを同時に防げます。
照合の結果は、ロット単位で記録します。印字内容の画像、読取り結果、照合の結果、照合に使った正しい値、検査時刻を残しておけば、出荷後に表示の問い合わせがあったときに、そのロットの印字が正しかったことを示せます。ロット実績との紐付けの考え方は外観検査AIの判定結果をMESに戻すで、紙の帳票の読取りは製造業のAI-OCRで扱っています。
導入の手順
- 印字の種類と読み取る項目を洗い出す(品番、ロット、期限、製造所記号など)
- 印字の種類ごとに撮像条件を決め、実際の製品で読めるか確認する
- 字種と書式を定義し、読取り後の書式チェックを設計する
- 正しい値をどこから取るか(MES、生産計画、印字機の設定)を決める
- 照合が不一致のとき、信頼度が低いときの処置(排出、ライン停止、人の確認)を決める
- 照合結果をロット単位で記録する先を決める
手順4が決まらないまま読取りだけを自動化すると、読めることは確認できても、内容が正しいかは結局人が見ることになります。
よくある質問
汎用のOCRソフトで印字検査はできますか?
ラベル印刷のように文字がはっきりしていれば読める場合があります。ドット印字や刻印は、一般的な文字と字形が違うため、汎用のOCRでは誤読が多くなります。印字の種類に対応した検査装置や、自社の印字で学習したモデルを使うのが確実です。
読取り率が99%なら十分ですか?
1日に数万個を検査するラインでは、1%の読取りエラーは数百個の確認作業になります。また、誤読したまま照合に通ってしまうと見逃しになります。読取り率だけでなく、誤読が照合をすり抜ける可能性と、確認に回る個数の両方で評価してください。
賞味期限の正しい値はどう計算しますか?
製造日と、品目ごとに決められた期限の日数から計算します。品目マスタに期限の日数を持たせ、MESや生産計画が製造日から自動で計算して印字機と検査装置に送る構成にすると、人の計算ミスを防げます。
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