溶接検査が難しい3つの理由
溶接の外観検査がAI化しにくいのは、3つの理由があります。1つ目は、ビードが立体形状で、幅・高さ・のど厚・アンダーカット(母材の削れ)といった不良が高さの差として現れることです。2Dの画像では、金属の光沢と焼け色にまぎれて形状が読み取りにくくなります。2つ目は、欠陥の種類が多いことです。ピット(表面の小さな穴)、ブローホール(内部の気孔が表面に出たもの)、割れ、スパッタ(飛び散った溶融金属の付着)、オーバーラップ、溶け込み不足など、それぞれ見え方が違います。3つ目は、溶接線が長く、ワークの形状に沿って曲がるため、固定カメラ1台では全長を撮れないことです。
このため、溶接の外観検査では、ビード形状を高さとして測る3D計測、溶接線に沿って計測位置を動かすロボット、計測データから異常を判定するAI、の3つを組み合わせる構成が主流になっています。
欠陥ごとの計測方式
| 欠陥 | 現れ方 | 向く計測 | 判定の方法 |
|---|---|---|---|
| ビード幅・高さ不良、のど厚不足 | 断面形状の寸法 | レーザ変位計(光切断) | 寸法の規格値との比較(ルール) |
| アンダーカット、オーバーラップ | ビード端部の段差・食い込み | レーザ変位計 | 断面形状の異常検知または規格値比較 |
| ピット、表面に開いたブローホール | 小さな穴 | 3D計測+2D画像 | AIによる異常検知・分類 |
| スパッタ | 周囲の母材に付着した粒 | 2D画像(照明の工夫) | AIによる検出 |
| 割れ | 細い線状の欠陥 | 高解像度の2D画像 | AI。微細な割れは浸透探傷など別検査 |
| 内部の気孔・溶け込み不足 | 表面には現れない | 外観検査では不可 | X線・超音波などの非破壊検査 |
寸法で決まる不良はルールで判定し、形の崩れや穴・粒のように見た目で判断する不良はAIで判定する、という役割分担にすると、判定の根拠を説明しやすくなります。内部欠陥は外観検査の範囲外で、AIを使っても表面からは見つけられません。
国内外の事例に見る構成
国内では、リンクウィズのインライン向け3Dロボット検査システムL-QUALIFYの事例が公開されています。自動車シートのタチエスは、同システムで0.1mm単位のレーザ溶接検査をロボット化しました。受注生産モータの東芝三菱電機産業システムは、出荷検査をロボット化し、検査時間を人の約半分にしたとされています(いずれもリンクウィズ公式サイトの事例紹介、2026年10月閲覧。数値は同社発表)。ロボットに3Dセンサを持たせ、ワークごとに異なる溶接線に沿って計測する構成で、多品種や受注生産でも検査経路を切り替えられる点が特徴です。
海外では、Audiのベリンガー・ヘーフェ工場が、TÜVの安全認証を受けたSiemensの仮想PLC(S7-1500V)とあわせて、AIによる溶接スパッタの外観検査を導入し、ネッカーズルム工場への拡大を予定していると報じられています(CO/AI、2025年4月)。車体の溶接ではスパッタの付着が後工程の塗装品質に影響するため、スパッタ検出は自動車の車体工場で優先度の高い用途です。
溶接条件のデータと検査結果をつなぐ
溶接の外観検査は、不良を見つけて止めるだけでなく、不良の原因となった溶接条件を特定する材料にもなります。そのためには、検査結果を溶接ロボットや溶接機のデータと紐付けて記録する必要があります。
紐付けに必要なのは、ワークのシリアルまたはロット、溶接線の識別(どの溶接箇所か)、溶接線上の位置、そして溶接時の電流・電圧・速度・ワイヤ送給量、使用したワイヤやガスのロット、溶接ロボットのプログラム番号です。検査で不良が見つかった位置と、その位置を溶接したときの条件を突き合わせられれば、「電流の変動が大きいときにピットが増える」といった傾向を分析できます。
これを実現するには、溶接機・ロボットのデータ、検査結果、ワークの識別情報を同じ時刻とキーで揃える仕組みが必要です。各装置の時刻がずれていると紐付けが崩れるため、時刻同期も設計に入れます。データの揃え方は品質AIの前提はトレーサビリティで、溶接ロボット側のAIの動向は溶接ロボットのAIで扱っています。
導入時に決めること
溶接外観検査AIの導入では、次の点を最初に決めます。
- 検査対象の溶接線と、検査する欠陥の種類(外観で判定できるものに限定)
- 各欠陥の合否基準(寸法の規格値、ピットの大きさと数、スパッタの許容範囲)
- ロボットで計測する場合の検査経路の作成方法と、品種追加時の手間
- 不良を検出したときの処置(手直しへ回す、ラインを止めて溶接条件を確認する)
- 検査結果と溶接条件を紐付けるキーと、記録先
溶接の合否基準は、検査員の経験に依存していることが多く、限度見本が整備されていない工場も少なくありません。AIの学習データを作る前に、限度見本を画像と寸法で整備することが、最も時間がかかり、最も効く準備になります。凹凸を捉える3D計測の詳細は3D外観検査AIの使いどころを参照してください。
よくある質問
溶接の外観検査に2Dカメラだけでは足りませんか?
スパッタや表面の穴のように見た目で判定できる欠陥は2Dでも検出できる場合があります。ビードの幅・高さ・アンダーカットのような形状の不良は高さの情報が必要なため、レーザ変位計などの3D計測を併用するのが一般的です。
溶接中にリアルタイムで品質を判定できますか?
溶接中の電流・電圧の波形やアーク音、溶融池の画像から異常を検知する研究や製品もあります。外観検査は溶接後の結果を見るのに対し、溶接中の監視は不良の発生をその場で検知できる点が違います。両方を組み合わせ、溶接中の異常と外観検査の結果を突き合わせると、原因の特定が速くなります。
多品種の溶接でもAI検査は使えますか?
品種ごとに溶接線の位置と形状が違うため、ロボットの検査経路と合否基準を品種ごとに持つ必要があります。CADデータや溶接ロボットのプログラムから検査経路を作れるかどうかが、多品種での運用の負担を左右します。
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